・ファーストライン後に病勢進行した進行性/転移性食道がん患者が対象の第3相試験
・キイトルーダ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・全生存期間は9.3ヶ月で、化学療法に比べて31%死亡リスクを減少
2020年10月7日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてファーストライン後に病勢進行した進行性/転移性食道がん患者に対する2次治療としての抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ、以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のMK-3475-181/KEYNOTE-181試験(NCT02564263)の結果が国立がん研究センター東病院・小島 隆嗣氏らより公表された。
MK-3475-181/KEYNOTE-181試験とは、ファーストライン治療後に病勢進行した進行性/転移性食道がん患者(N=628人)に対する2次治療として、3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg単剤療法を投与する群、または主治医が選択した化学療法(ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン)を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてPD-L1陽性(CPS≥10)群、扁平上皮がん、全患者それぞれにおける全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などを比較検証した国際多施設共同ランダム化第3相試験である。
進行性/転移性食道がん患者の5年生存率は5%以下であり、予後は非常に不良である。進行性/転移性食道がん患者に対するファーストラインとしての現在の標準治療は代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)+プラチナ系抗癌剤であるが、2次治療以降の標準治療は現在のところ存在しない。第2相試験にて進行性/転移性食道がん患者に対する有効性、安全性が示されている抗PD-1抗体薬キイトルーダの有用性を確認する目的で本試験が開始された。
本試験の最終解析の結果、主要評価項目の1つであるPD-L1陽性(CPS≥10)群における全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ単剤群9.3ヶ月に対して化学療法群6.7ヶ月で、死亡(OS)のリスクを31%(HR:0.69、95%信頼区間:0.52-0.93、P=0.0074)統計学的有意に改善した。また、12ヶ月全生存率(OS)はキイトルーダ単剤群43%(95%信頼区間:33.5%-52.1%)に対して化学療法群20%(95%信頼区間:13.5%-28.3%)だった。
また、扁平上皮がん群における全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ単剤群8.2ヶ月に対して主治医選択化学療法群7.1ヶ月で、死亡(OS)のリスクを22%(HR:0.78、95%信頼区間:0.63-0.96、P=0.0095)減少した。全患者群における全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ単剤群7.1ヶ月に対して化学療法群7.1ヶ月、死亡(OS)のリスクを11%(HR:0.89、95%信頼区間:0.75-1.05、P=0.0560)減少した。
一方の安全性として、グレード3~5の治療関連有害事象(TRAE)発症率はキイトルーダ単剤群18.2%に対して化学療法群40.9%を示した。
第3相のMK-3475-181/KEYNOTE-181試験の結果より小島 隆嗣氏らは以下のように結論を述べている。「ファーストライン後に病勢進行した進行性/転移性食道がん患者に対する2次治療としての抗PD-1抗体薬キイトルーダは、PD-L1陽性(CPS≥10)群における全生存期間(OS)を統計学的有意に改善し、治療関連有害事象(TRAE)も低率でした」と結論を述べている。