10月12日、MSD株式会社は、抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ、以下キイトルーダ)に対し、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの適応追加を申請したことを発表した。
キイトルーダは、主にT細胞に発現する受容体であるPD-1と、腫瘍細胞に発現するリガンドであるPD-L1/PD-L2の結合を阻害する薬剤。キイトルーダがPD-1に結合することでT細胞でPD-1経路を介して抗腫瘍活性の抑制を解除する。
乳がんは女性で最も多いがん腫であり、年間約93,000人が罹患し、約15,500人が死亡していると推定されている。乳がんは5つの細部タイプに分類でき、その1つのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)はホルモン受容体やHER2の過剰発現を伴わないタイプ。乳がん全体の約15%がTNBCであり、他のタイプに比べ増殖能が高く、生存期間は短い。
今回の申請は、KEYNOTE-355試験の結果に基づくもの。同試験とは、転移・再発乳がんに対し全身性の治療歴がない、手術不能または再発のTNBCを対象に行った第3相臨床試験である。試験の結果、腫瘍にPD-L1の発現が認められる(CPS≧10)の患者群で無増悪生存期間(PFS)が化学療法に対して統計学的有意な改善を認めたという。(参照:2020年2月21日 MSD株式会社ニュースリリース)
なお、キイトルーダは前立腺がん、胃がん、肝細胞がん、小細胞肺がんなどを対象とした後期臨床試験を含め世界で1,200以上の臨床試験が行われている。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)とは
TNBCは50歳未満の女性に多く、診断から5年以内の再発率が高く、進行の速い乳がん。乳がんにはエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)のいずれかに陽性反応を示すタイプもあるが、TNBCはいずれも陰性のタイプである。このため、TNBCはこれらのマーカーへの標的療法には反応せず、治療が困難と言われている。
キイトルーダについて
キイトルーダは、自己の免疫力を高め、がん細胞に反応して攻撃を助ける抗PD-1抗体。キイトルーダはPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害して、がん細胞を攻撃するTリンパ球を活性化するヒト化モノクローナル抗体である。
参照元:
MSD株式会社 ニュースリリース