・ホルモン受容体陽性HER2陰性の早期乳がん患者が対象の第3相試験
・術後療法としてイブランス+ホルモン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・3年無浸潤疾患生存率は88.2%で、ホルモン療法に比べて統計学的有意な改善を認めず
2021年1月15日、医学誌『The Lancet Oncology』にてホルモン受容体陽性HER2陰性の早期乳がん患者に対する術後療法としてのCDK4/6阻害薬イブランス(一般名:パルボシクリブ、以下イブランス)+ホルモン療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のPALLAS試験(NCT02513394)の中間解析の結果がDana-Farber Cancer InstituteのErica L Mayer氏らにより公表された。
PALLAS試験とは、ホルモン受容体陽性HER2陰性の早期乳がん患者(N=5760人)に対する術後療法として28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回イブランス125mg+主治医選択の内分泌療法を2年間投与し、その後内分泌療法を少なくとも合計5年間投与する群(N=2883人)、または術後療法として主治医選択の内分泌療法を少なくとも5年間投与する群(N=2877人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無浸潤疾患生存期間(iDFS)、副次評価項目として安全性などを検証した国際多施設共同オープンラベルの第3相試験である。
本試験が開始された背景として、ホルモン受容体陽性HER2陰性の転移性乳がん患者に対するホルモン療法にイブランスを上乗せすることにより、無増悪生存期間(PFS)を改善することが示されている。しかしながら、ホルモン受容体陽性HER2陰性の早期乳がん患者に対するイブランスの上乗せ効果は臨床試験で検証されていない。以上の背景より、ホルモン受容体陽性HER2陰性の早期乳がん患者に対する術後療法としてのCDK4/6阻害薬イブランス+ホルモン療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値23.7ヵ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である3年無浸潤疾患生存率(iDFS)はイブランス+ホルモン療法群の88.2%(95%信頼区間:85.2-90.6%)に対してホルモン療法群は88.5%(95%信頼区間:85.8-90.7%)と、イブランス+ホルモン療法群で浸潤疾患生存(iDFS)のリスクが7%減少(HR:0.93、95%信頼区間:0.76-1.15、P=0.51)した。以上の結果より、独立データモニタリング委員会はイブランス+ホルモン療法におけるイブランス投与の中止を勧告した。
最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害物質(AE)は下記の通りである。好中球減少症はイブランス+ホルモン療法群61.3%に対してホルモン療法群0.3%、白血球減少症はイブランス+ホルモン療法群30.2%に対してホルモン療法群0.1%、疲労はイブランス+ホルモン療法群2.1%に対してホルモン療法群0.3%。また、重篤な有害事象(SAE)発症率はイブランス+ホルモン療法群12.4%に対してホルモン療法群7.6%を示し、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は確認されなかった。
以上のPALLAS試験の結果よりErica L Mayer氏らは「ホルモン受容体陽性HER2陰性の早期乳がん患者に対する術後療法としてのCDK4/6阻害薬イブランス+ホルモン療法は、ホルモン療法に比べて3年無浸潤疾患生存率(iDFS)を改善しませんでした。さらなる長期追跡調査と関連の研究が進行中です」と結論を述べている。