・70歳以上の高齢者が対象の大規模コホートの解析
・アスピリンの定期内服が大腸がん発症を抑制するかを検証
・70歳以前から定期内服を開始している群は70歳以降の大腸がんの発症を抑制するが、
70歳以降に内服を開始しても統計学的有意に発症を抑制しなかった
2021年1月21日、医学誌『JAMA Oncology』にて70歳以上の高齢者においてアスピリンの定期内服が大腸がんの発症を抑制するかどうかをを検討したプール解析の結果がMassachusetts General Hospital and Harvard Medical SchoolのChuan-Guo Guo氏らにより公表された。
本プール解析は、1980年6月1日~2014年6月30日に実施されたNurses’ Health試験と1986年1月1日~2014年1月31日の期間に実施されたHealth Professionals Follow-up試験という2つの大規模コホートを解析したもの。悪性黒色腫でない皮膚がんを除く、何かしらのがんと診断された70歳以上の高齢者94,540人を対象に、アスピリンの内服と大腸がんの発症の関連を検証した統計解析結果である。なお、炎症性腸疾患と診断された参加者は解析から除外された。
本試験が開始された背景として、ランダム化臨床試験により50~59歳の患者に対するアスピリン内服は大腸がんの発症率を抑制するため、予防としての内服が推奨されている。しかしながら、近年の臨床結果にて高齢者に対するアスピリン内服は、臨床的ベネフィットに欠ける可能性が示唆されている。以上の背景より、70歳以上の高齢者に対するアスピリン内服は大腸がんの発症を抑制するか検証する目的で本解析が行われた。
本試験に登録された94,540人の背景は下記の通り。年齢中央値は女性で76.4歳、男性で77.7歳。女性は71.1%。以上の背景を有する患者における本試験の結果は下記の通りである。
70歳時点、または70歳以降でアスピリンを定期的に内服している患者は、定期的に内服していない患者に比べて大腸がんの発症リスクを20%減少(HR:0.80、95%信頼区間:0.72-0.90)した。
一方で、70歳時点より前にアスピリンの内服を開始した患者では、大腸がんの発症リスクが20%減少(HR:0.80、95%信頼区間:0.67-0.95)したものの、70歳を超えてからアスピリンの内服を開始した患者では、大腸がんの発症リスクを8%減少(HR:0.92、95%信頼区間:0.76-1.11)するにとどまり、統計学有意な差も確認されなかった。
以上のプール解析の結果よりChuan-Guo Guo氏ら「70歳よりも前にアスピリンの定期内服を開始し、その後も継続して内服した患者におけるアスピリンの内服は大腸がんの発症を統計学有意に抑制する可能性が示唆されました。一方、70歳を超えてからアスピリンの定期内服を開始した患者においては、大腸がんの発症抑制効果は確認されませんでした」と結論を述べている。