・治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者が対象の第3相試験
・キイトルーダ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・全患者における全生存期間は9.9ヶ月でプラセボ群に対して有意な改善は認めなかったが、
PD-L1が豊富な腫瘍では抗腫瘍効果を認めた
2021年3月4日、医学誌『The Lancet Oncology』にて治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ、以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を主治医選択の化学療法と比較検証した第3相のKEYNOTE-119試験(NCT02555657)の結果がDana-Farber Cancer InstituteのEric P Winer氏らにより公表された。
KEYNOTE-119試験とは、転移性トリプルネガティブ乳がん患者(N=622人)に対して3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg単剤療法を最大35サイクル投与する群(N=312人)、または主治医選択の化学療法(カペシタビン、エルブリン、ゲムシタビン、ビノレルビン等)を投与する群(N=310人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてCPS陽性群(CPS≧10)、CPS陽性群(CPS≧1)、全患者群の全生存期間(OS)を比較検証した国際多施設共同ランダム化オープンラベルの第3相試験である。
本試験が開始された背景として、転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、KEYNOTE-012試験、KEYNOTE-086試験にて転移性トリプルネガティブ乳がんの二次治療、三次治療において持続的な抗腫瘍効果を示し、忍容性も良好であることが確認されている。以上の背景より、化学療法に比べてキイトルーダ単剤療法は抗腫瘍効果が優れるかどうかを検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値31.4ヶ月(IQR:27.8-34.4ヶ月)、31.5ヶ月(IQR:27.8-34.6ヶ月)時点における結果は下記の通りである。
主要評価項目であるCPS陽性群(CPS≧10)における全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ群12.7ヶ月(95%信頼区間:9.9-16.3ヶ月)に対して化学療法群11.6ヶ月(95%信頼区間:8.3-13.7ヶ月)、キイトルーダ群で死亡(OS)のリスクを22%減少(HR:0.78、95%信頼区間:0.57-1.06、P=0.057)した。
CPS陽性群(CPS≧1)における全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ群10.7ヶ月(95%信頼区間:9.3-12.5ヶ月)に対して化学療法群10.2ヶ月(95%信頼区間:7.9-12.6ヶ月)、キイトルーダ群で死亡(OS)のリスクを14%減少(HR:0.86、95%信頼区間:0.69-1.06、P=0.073)した。
全患者群における全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ群9.9ヶ月(95%信頼区間:8.3-11.4ヶ月)に対して化学療法群10.8ヶ月(95%信頼区間:9.1-12.6ヶ月)、キイトルーダ群で死亡(OS)のリスクを3%減少(HR:0.97、95%信頼区間:0.82-1.15)した。
一方の安全性として、最も一般的なグレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。貧血がキイトルーダ群1%に対して化学療法群3%、白血球数減少が1%未満に対して5%、好中球数減少が1%未満に対して10%、好中球減少症が0%に対して13%であった。
以上のKEYNOTE-119試験の結果よりEric P Winer氏らは「治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん全患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、化学療法に比べて全生存期間(OS)を統計学的有意には改善しませんでした。これらの知見は特にPD-L1が豊富な腫瘍を対象としたキイトルーダ単剤療法の今後の研究に役立つ可能性があります」と結論を述べている。