・化学療法治療歴のない進行性尿路上皮がんが対象の第3相試験
・ゲムシタビン+シスプラチン+ベバシズマブ併用療法の有効性・安全性を比較検証
・全生存期間は14.5ヶ月であり、ゲムシタビン+シスプラチン+プラセボ併用に対して統計学的有意な延長は示さず
2021年5月14日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて化学療法治療歴のない進行性尿路上皮がん患者に対するゲムシタビン+シスプラチン+ベバシズマブ併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT00942331)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのJonathan E. Rosenberg氏らにより公表された。
本試験は、化学療法治療歴のない進行性尿路上皮がん患者(N=506人)に対して、ゲムシタビン+シスプラチン+ベバシズマブ併用療法を投与する群、ゲムシタビン+シスプラチン+プラセボ併用療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、安全性を検証した第3相試験である。
本試験が実施された背景として、ゲムシタビン+シスプラチン併用療法は進行性尿路上皮がんの標準治療である。血管新生阻害薬であるベバシズマブは進行性尿路上皮がんに対して重要な薬剤であることが他の臨床試験で確認されている。以上の背景より、化学療法治療歴のない進行性尿路上皮がん患者に対するゲムシタビン+シスプラチン+ベバシズマブ併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値76.3ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はゲムシタビン+シスプラチン+ベバシズマブ併用群の14.5ヶ月に対してゲムシタビン+シスプラチン+プラセボ併用群で14.3ヶ月と、ゲムシタビン+シスプラチン+ベバシズマブ併用群は死亡(OS)のリスクを13%減少(HR:0.87、95%信頼区間:0.72-1.05、P=0.14)を示した。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はゲムシタビン+シスプラチン+ベバシズマブ併用群の8.0ヶ月に対してゲムシタビン+シスプラチン+プラセボ併用群で6.7ヶ月、ゲムシタビン+シスプラチン+ベバシズマブ併用群は死亡(OS)のリスクを23%減少(HR:0.77、95%信頼区間:0.63-0.95、P=0.016)を示した。
一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)は両群間で統計学有意な差は確認されなかった。なお、ゲムシタビン+シスプラチン+ベバシズマブ併用群で多くの患者で確認された有害事象(AE)は高血圧、蛋白尿であった。
以上の第3相試験の結果よりJonathan E. Rosenberg氏らは「化学療法治療歴のない進行性尿路上皮がん患者に対する標準治療であるゲムシタビン+シスプラチン併用療法に対するベバシズマブの上乗せ効果は、全生存期間(OS)を統計学的に改善しませんでした」と結論を述べている。