毎年約19万人の米国人が非小細胞肺がん(NSCLC)と診断され、その約半数が転移性(ステージIV)となる。ステージIV の非小細胞肺がん患者は、歴史的に見ても予後不良であったが、2000年以降に導入された新しい治療法は転帰が改善した。そのような中、米国シアトルの Fred Hutchinson Cancer Research Centerは、ベストサポートケア(BSC)が唯一の標準治療だった1990年から、近年の2015年に至る間に、どの程度生存が延長したかを定量化すること、また適切な全身療法の使用が患者にもたらす生存延長への影響を評価することを目的に研究を行った。
研究者らは、1990~2015年の転移性非小細胞肺がん患者の生存延長を推定するシミュレーションモデルを開発した。生存推定値は、主要な臨床試験の結果と生存期間範囲から推測し、治療患者の割合は、SEERデータベースおよび治療レジストリから得ている。さらに、全身療法の使用が、現状から10%および30%増加した場合の全生存期間(OS)の増加を推定した。
1990年から2015年にかけて、1年生存率は14.1%増加し、患者の平均全生存期間は4.2ヶ月(32,700生存年)改善していた。さらに、全身治療を受ける患者を10%増加させると全生存期間は5.1ヶ月(39,700生存年)、30%増加させると6.9ヶ月(53,800生存年)増加するという結果が出た。
他のがんと比較して転移性非小細胞肺がんの生存率は依然として低いが、過去25年間に有意義な進歩が見られた。治療適応にも関わらずベストサポーティブケア(BSC)だけを受けている患者の多くに全身療法の使用することで、この進歩はさら進展することができると著者は記している。
記事:加藤 テイジ