2017年9月8日から12日までスペイン・マドリードで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO)にて、未治療の進行または転移性腎細胞がん患者に対してニボルマブ(商品名オプジーホ;以下オプジーボ)とイピリムマブ(商品名ヤーボイ;以下ヤーボイ)併用療法の有効性を比較検証した第III相臨床試験(CheckMate-214、NCT02231749)の結果が、フランス・ビルジュイフにあるグスタフ・ルッシーがん研究所のBernard Escudier氏により発表された。
本試験では、未治療の進行または転移性腎細胞がん患者に対して現在の標準治療であるスニチニブ(商品名スーテント;以下スーテント)単剤療法(N=546人)、またはオプジーボ+ヤーボイ併用療法(N=550人)を投与し、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、そして全生存期間(OS)を比較検証している。
本試験のフォローアップ中央期間は17.5ヶ月で、その結果はInternational mRCC Database Consortium(IMDC)予後リスク分類で中および高リスクに該当する患者における客観的奏効率(ORR)はオプジーボ+ヤーボイ併用療法41.6%に対して、スーテント単剤療法26.5%と有意に改善した(p < 0.0001) 。その内、完全奏効率(CR)はオプジーボ+ヤーボイ併用療法9.4%に対して、スーテント単剤療法1.2%であった。
また、無増悪生存期間(PFS)中央値はオプジーボ+ヤーボイ併用療法11.6ヶ月に対して、スーテント単剤療法8.4ヶ月と、病勢進行または死亡のリスクを18%減少した (p = 0.03)。
さらに、上記結果の患者背景をIMDC予後リスク分類で中および高リスクに該当する患者、オプジーボをはじめ抗PD-1/L1抗体薬の効果予測因子として考えられているPD-L1発現率1%以上の患者という2つの条件で絞り込むことで、オプジーボ+ヤーボイ併用療法群でさらに治療成績が改善する傾向が確認された。
客観的奏効率(ORR)は58%に対して25%、無増悪生存期間(PFS)中央値は22.8ヶ月(95%信頼区間:9.4-推定不能)に対して5.9ヶ月(95%信頼区間:4.4-7.1)と、病勢進行または死亡のリスクが52%減少した(ハザード比0.48、95%信頼区間:0.28-0.82、p=0.0003)。
一方で、本試験の研究医師はリスク因子とPD-L1発現率の違いにより、治療成績の違いが出ることを明らかにした。その理由としては、PD-L1発現率1%以上の患者はIMDC予後リスク分類の低リスク患者よりも中または高リスク患者の方が多い傾向があるとも考えられるからである。
例えば、低リスク群におけるPD-L1発現率1%以上の患者はオプジーボ+ヤーボイ併用療法群で11%、スーテント単剤療法群で12%であるのに対して、中または高リスク群はそれぞれ26%、29%であった。
実際、低リスク群における客観的奏効率(ORR)の結果はオプジーボ+ヤーボイ併用療法群29%に対してスーテント単剤療法群52%(p = 0.0002) 、また無病悪生存期間(PFS)中央値の結果は15.3ヶ月(95%信頼区間:9.7-20.3ヶ月) に対して25.1ヶ月 (95%信頼区間:20.9-推定不能) と病勢進行または死亡のリスクが117%(95%信頼区間:1.46-3.22、p < 0.0001)増加している。なお、リスクを有する患者全体における客観的奏効率(ORR)、無病悪生存期間(PFS)中央値はともに違いが確認されなかった。
有害事象としては、オプジーボ+ヤーボイ併用療法群で93%(N=509人)、スーテント単剤療法群で97%(N=521人)確認され、グレード3〜5の有害事象発現率はそれぞれ54%、63%確認された。また、有害事象発現のために治療継続が困難となった患者はオプジーボ+ヤーボイ併用療法群で22%、スーテント単剤療法群で12%確認され、治療関連死の割合はそれぞれ1%(7人)、1%(4人)確認された。
以上の結果より、本発表では中または高リスク未治療の進行または転移性腎細胞がん患者に対するオプジーボ+ヤーボイ併用療法が、現在の標準治療であるスーテント単剤療法にとって代わる治療選択肢になる可能性が示唆された。
なお、本発表の数日前、オプジーボとヤーボイを開発したブリストル・マイヤーズ スクイブ社、小野薬品工業株式会社は独立データモニタリング委員会(DMC)よりCheckMate-214試験の早期有効中止を推奨されたとプレスリリースで発表している。
その理由としては、本発明では触れられていなかったが中および高リスク患者における全生存期間(OS)中央値がスニチニブ単剤療法群26ヶ月(95%信頼区間:22.1 – 推定不能)に対してオプジーボ+ヤーボイ併用療法群未到達と、死亡リスクが37%(ハザード比=0.63、99.8%信頼区間:0.44 – 0.89、p<0.0001)減少することが中間解析で証明されたためである。