根治切除後の再発や転移のリスクが高いステージ3b/c、またはステージ4の悪性黒色腫患者において、術後補助療法としてニボルマブ(商品名オプジーボ)を投与された群はイピリムマブ(商品名ヤーボイ)を投与された群と比べ再発リスクが35%低下した。日本も参加している国際共同第3相試験(CheckMate-238、NCT02388906)の中間解析結果で、2017年9月8日から12日までスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)で発表され、同年9月10日のNew England Journal of Medicineに論文が掲載された。
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オプジーボ vs ヤーボイ直接比較で有益性鮮明、試験は早期終了
本中間解析では、プログラム細胞死受容体1(PD-1)を標的とする免疫チェックポイント阻害薬オプジーボは悪性黒色腫の術後補助療法として、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)を標的とする免疫チェックポイント阻害薬ヤーボイと比べ、有効性、安全性のあらゆる角度からの評価ですぐれると判断され、安全性モニタリング委員会はオプジーボの有益性が明確として最短18カ月の追跡期間で試験終了を決定した。オプジーボの有益性には、ヤーボイよりも副作用が少なかったことが大きく寄与した可能性がある。
治療期間は最長1年間、オプジーボの投与回数中央値は24回
2015年3月30日から11月30日までに、25カ国、130施設で、ステージ3b/cまたはステージ4の悪性黒色腫患者906例が登録され、905例に試験薬が投与された。対象は、局所病変のみならずリンパ節転移病変、脳転移を含む遠隔転移病変を完全切除して12週間以内の患者である。オプジーボ群は3mg/kgを2週ごとに静注し、ヤーボイ群は10mg/kgを3週ごとに4回静注し、以降は投与間隔を12週間に延長した。両群とも治療期間は最長1年間とした。
データカットオフは2017年5月15日で、全例が18カ月以上の追跡期間を経過した(中央値19.5カ月)。投与回数の中央値は、オプジーボ群は24回(1回から26回)、ヤーボイ群は4回(1回から7回)で、1年間の投与を完了した患者の割合は、それぞれ60.8%(275/452例)、26.9%(122/453例)、次の治療(放射線療法、外科的介入、全身薬物療法など)に移行した患者の割合はそれぞれ28.5%(129例)、37.7%(171例)であった。
治療1年経過時点でオプジーボ群7割、ヤーボイ群6割が無再発
治療開始後12カ月の時点での無再発生存(RFS)率は、オプジーボ群(453例)で70.5%、ヤーボイ群(453例)で60.8%であった。
18カ月時点でのRFS率は、オプジーボ群(453例)で66.4%、ヤーボイ群(453例)で52.7%、両群ともRFS期間の中央値特定には至っていない。再発、または死亡した患者の割合はそれぞれ34.0%、45.5%で、RFS期間はオプジーボ群がヤーボイ群より有意に延長すると予測され(pステージ4でも過半数が無再発、オプジーボ群の8割は遠隔転移なし
病期ステージ別の12カ月RFS率も同様、ステージ3b/cのオプジーボ群(367例)は72.3%、ヤーボイ群(366例)は61.6%で、オプジーボ群の再発リスクは35%低下した(HR=0.65)。ステージ4のオプジーボ群(82例)は63.0%、ヤーボイ群(87例)は57.5%で、オプジーボ群の再発リスクは30%低下した(HR=0.70)。
他のほとんどの層別因子による比較でも、オプジーボ群の再発リスクはヤーボイ群より低下したことが確認された。
遠隔転移が認められない期間は、両群とも中央値特定には至っておらず、12カ月時点で遠隔転移なしの患者の割合は、オプジーボ群(369例)で80.2%、ヤーボイ群(366例)で73.4%、オプジーボ群の遠隔転移リスクは27%低下した(HR=0.73)。
高い安全性は次の治療選択の自由度を拡大する
本試験解析対象において、ヤーボイよりすぐれるオプジーボの安全性が目立った。グレード3またはグレード4の治療関連有害事象の発現率、および有害事象を理由とする治療中止率は、オプジーボ群(各14%、10%)がヤーボイ群(各46%、43%)のおよそ4分の1であった。
オプジーボ群に治療関連死は報告されておらず、ヤーボイ群では2例(骨髄形成不全、大腸炎)であった。オプジーボ群ではヤーボイ群と比べ、甲状腺機能低下症など低悪性度の甲状腺障害が多く認められた(各20.4%、12.6%)。
治療標的の異なるヤーボイの恩恵を受ける患者の存在も考慮する~
本試験プロトコルに基づく治療を完了した後、次の治療として免疫療法を選択したのはヤーボイ群(23.0%)がオプジーボ群(11.0%)のおよそ2倍であった。ヤーボイ群で免疫療法を選択した104例のうち、半数超(63例)はペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の治療に移行し、次いで多かったのはオプジーボ(43例)であった。オプジーボ群で免疫療法を選択した50例のうち35例はヤーボイの治療に移行した。このことから、オプジーボの治療で十分な有益性が得られなかった患者にとって、ヤーボイが重要な選択肢となる可能性も示唆された。また、本試験の治療完了後に外科的介入を実施したのは両群同程度(各15.2%、14.1%)であったことから、オプジーボ、ヤーボイのいずれの免疫療法でも15%程度の患者は病勢進行がない状態を保持可能であることが示された。