・未治療進行性腎細胞がん患者に対する現在の標準治療はマルチキナーゼ阻害剤であるスーテントである
・中リスク又は高リスク未治療進行性腎細胞がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるオプジーボ+抗CTLA-4抗体薬であるヤーボイ併用療法はスーテントに対して良好な治療成績を示す
・オプジーボ+ヤーボイ併用療法の主な治療関連有害事象(TRAE)は疲労、掻痒28%、下痢27%、皮膚障害、吐き気
2018年3月21日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて未治療の進行性腎細胞がん患者に対し、現在の標準治療であるスニチニブ(商品名スーテント;以下スーテント)単剤療法に対するニボルマブ(商品名オプジーホ;以下オプジーボ)+イピリムマブ(商品名ヤーボイ;以下ヤーボイ)併用療法の有効性を比較検証した第III相のCheckMate-214試験(NCT02231749)の結果が、Memorial Sloan Kettering Cancer Center・Robert J. Motzer氏らにより公表された。
CheckMate-214試験とは、18歳以上の未治療進行性腎細胞がん患者(N=1096人)に対して3週間に1回の投与間隔でオプジーボ3mg/kg+ヤーボイ1mg/kg併用療法を4サイクル投与後に2週間に1回の投与間隔でオプジーボ3mg/kg単剤療法を投与する群(N=550人)、又は1日1回スーテント50mg単剤療法を4 週間連日投与後に2週間休薬(1コース)を繰り返し投与する群(N=546人)に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として腎細胞がんのリスク分類であるIMDC分類による中リスク(Intermediate)、高リスク(Poor)患者の全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)を比較検証した国際多施設共同オープンラベルの第III相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はオプジーボ+ヤーボイ群で62歳(26-85歳)、スーテント群で62歳(21-85歳)。性別はオプジーボ+ヤーボイ群で男性75%(N=413人)、女性25%(N=137人)、スーテント群で男性72%(N=395人)、女性28%(N=151人)。IMDC分類によるリスク分類の患者内訳はオプジーボ+ヤーボイ群で低リスク(Favorable)23%(N=125人)、中リスク(Intermediate)61%(N=334人)、高リスク(Poor)17%(N=91人)、スーテント群で低リスク(Favorable)23%(N=124人)、中リスク(Intermediate)61%(N=333人)、高リスク(Poor)16%(N=89人)。
前治療歴はオプジーボ+ヤーボイ群で放射線療法11%(N=63人)、腎切除82%(N=453人)、スーテント群で放射線療法13%(N=70人)、腎切除0%(N=437人)。標的病変/非標的病変の個数はオプジーボ+ヤーボイ群で1個22%(N=123人)、2個以上78%(N=427人)、スーテント群で1個22%(N=118人)、2個以上78%(N=427人)。転移部位はオプジーボ+ヤーボイ群で肺69%(N=381人)、リンパ節45%(N=246人)、骨20%(N=112人)、肝臓18%(N=99人)、スーテント群で肺68%(N=373人)、リンパ節49%(N=268人)、骨22%(N=119人)、肝臓20%(N=107人)。PD-L1発現率別の患者割合はオプジーボ+ヤーボイ群で1%未満が77%(N=386人)、1%以上が23%(N=113人)、スーテント群で1%未満が75%(N=376人)、1%以上が25%(N=127人)。
上記背景を有する中リスク又は高リスク進行性腎細胞がん患者(N=847人)対してオプジーボ+ヤーボイ併用群(N=425人)、スーテント単剤群(N=422人)を投与した主要評価項目である全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)の結果はそれぞれ下記の通りである。
全生存期間(OS)はスーテント単剤群よりもオプジーボ+ヤーボイ併用群で統計学的有意に改善することを示した。12ヶ月全生存率(OS)はオプジーボ+ヤーボイ併用群80%(95%信頼区間:76%-84%)に対してスーテント単剤群72%(95%信頼区間:67%-76%)。18ヶ月全生存率(OS)はオプジーボ+ヤーボイ併用群75%(95%信頼区間:70%-78%)に対してスーテント単剤群60%(95%信頼区間:55%-65%)、オプジーボ+ヤーボイ併用群で死亡のリスクが37%統計学的有意に減少(ハザードリスク比:0.63,P<0.001)することを示した。なお、全生存期間(OS)中央値はオプジーボ+ヤーボイ併用群未到達(95%信頼区間:28.2ヶ月-未到達)に対してスーテント単剤群26.0ヶ月(95%信頼区間:22.1ヶ月-未到達)である。
客観的奏効率(ORR)はオプジーボ+ヤーボイ併用群42%(95%信頼区間:37%-47%)に対してスーテント単剤群27%(95%信頼区間:22%-31%)、オプジーボ+ヤーボイ併用群で統計学的有意に改善することを示した(P<0.001)。また、客観的奏効率(ORR)のうち完全奏効(CR)を達成しした患者割合はオプジーボ+ヤーボイ併用群9%(N=40人)に対してスーテント単剤群1%(N=5人)である。
無増悪生存期間(PFS)中央値はオプジーボ+ヤーボイ併用群11.6ヶ月(95%信頼区間:8.7ヶ月-15.5ヶ月)に対してスーテント単剤群8.4ヶ月(95%信頼区間:7.0ヶ月-10.8ヶ月)、オプジーボ+ヤーボイ併用群で病勢進行又は死亡のリスクが18%減少(ハザードリスク比:0.82,P=0.03)するも、両群間に統計学的有意な差は確認されなかった。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者はオプジーボ+ヤーボイ併用群93%(N=509人)、スーテント単剤群97%(N=521人)。全グレードの治療関連有害事象(TRAE)の内訳としてはオプジーボ+ヤーボイ併用群で疲労37%(N=202人)、掻痒28%(N=154人)、下痢27%(N=145人)、皮膚障害22%(N=118人)、吐き気20%(N=109人)など、スーテント単剤群で下痢52%(N=278人)、疲労49%(N=264人)、手足症候群43%(N=231人)、高血圧40%(N=216人)、吐き気38%(N=202人)、味覚異常33%(N=179人)などである。
また、グレード3又は4の治療関連有害事象(TRAE)はオプジーボ+ヤーボイ併用群46%(N=250人)、スーテント単剤群63%(N=335人)で発症し、治療関連有害事象(TRAE)のために治療継続が困難になった患者はオプジーボ+ヤーボイ併用群22%、スーテント単剤群12%である。
以上のCheckMate-214試験の結果よりRobert J. Motzer氏らは以下のように結論を述べている。”中リスク又は高リスク未治療進行性腎細胞がん患者さんに対するオプジーボ+ヤーボイ併用は、現在の標準治療であるスーテント単剤療法よりも主要評価項目である全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)を統計学的有意に改善することを示しました。”