・RET融合遺伝子変異のある進行性固形がん患者に対するRET阻害薬BLU-667の客観的奏効率(ORR)45%である
・RET阻害薬BLU-667の客観的奏効率(ORR)のがん種別内訳は非小細胞肺がん50%、甲状腺髄様がん40%である
・RET阻害薬BLU-667の最も一般的な治療関連有害事象(TRAE)は便秘2、ALT上昇、AST上昇である
2018年4月14日より4月18日までアメリカ・シカゴで開催されたAmerican Association for Cancer Research(AACR2018)にて、RET融合遺伝子変異のある進行性固形がん患者に対するRET阻害薬であるBLU-667を単剤療法の安全性、有効性を検証した第I相のARROW試験(NCT03037385)の結果が公表された。
ARROW試験とは、RET融合遺伝子変異のある非小細胞肺がん、甲状腺髄様がん、または進行性固形がん患者(N=53人)に対して1日1回BLU-667 30mgから600mg単剤療法を投与し、主要評価項目として最大耐用量(MTD)、第II相試験推奨用量(RP2D)、治療関連有害事象(TRAE)発症率、副次評価項目として完全奏効(CR)、部分奏効(PR)を達成した患者割合として定義された客観的奏効率(ORR)などを検証したシングルアームオープンラベルの第I相試験である。
患者背景は下記の通りである。がんの種類は本試験に登録された患者53人の内19人は非小細胞肺がん患者、29人は甲状腺髄様がん患者、5人は固形がん患者。前治療歴は53人の内27人(51%)はマルチキナーゼ阻害剤による治療歴があり、18人(34%)は免疫チェックポイント阻害薬による治療歴を有していた。
以上の背景を有する患者に対してBLU-667単剤療法を投与した本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である20%以上の患者で確認されたグレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)は便秘24%、ALT上昇22%、AST上昇20%であった。また、グレード3の治療関連有害事象(TRAE)は8人(16%)の患者で確認され、高血圧、好中球減少症が2人以上の患者で確認された。なお、グレード4または5の治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者はいなかった。
また、BLU-667 600mgによる治療を受けた患者の7人が用量制限毒性(DLT)を経験し、1人の患者がBLU-667によるグレード3のALT上昇により治療中止に至った。他にも本試験に参加した11人の患者が治療中止に至っているが、その原因は病勢進行(N=8人)、BLU-667に関係のない有害事象(AE)(N=1人)などであった。以上の結果より、BLU-667の忍容性が確認され、最大耐用量(MTD)はBLU-667 400mgであることが示された。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)は本試験に参加した53人の内40人の患者で評価可能であり、その結果は客観的奏効率(ORR)45%を示した。なお、奏効率の評価が可能であった40人のがん種別の内訳は非小細胞肺がん患者14人、甲状腺髄様がん患者25人、甲状腺乳頭がん患者1人であり、がん種別の奏効は下記の通りである。
非小細胞肺がん患者に対しては7人の患者で部分奏効(PR)を達成し、客観的奏効率(ORR)は50%を示した。また、非小細胞肺がんにおけるRET融合遺伝子変異の中でも最も一般的なRET-KIF5B、RET-CCDC6の遺伝子を有する患者に対して奏効を示し、脳転移の有する患者に対しても奏効が確認されている。
甲状腺髄様がん患者に対しては1人の患者で完全奏効(CR)を達成、9人の患者で部分奏効(PR)を達成し、客観的奏効率(ORR)は40%を示した。また、甲状腺髄様がんにおけるRET融合遺伝子変異の中でも最も一般的なRET-M918Tの遺伝子を有する患者に対して奏効を示している。
以上のARROW試験の結果よりRET阻害薬BLU-667を開発したBlueprint Medicines社・最高医学責任者(CMO)・Andy Boral氏は以下のように述べている。”RET融合遺伝子変異のある進行性固形がん患者さんに対するRET阻害薬BLU-667は高い抗腫瘍効果を示しました。今後我々は、複数のがん種においてBLU-667の有効性を証明するための臨床試験を推進するとともに、BLU-667の抗腫瘍効果の持続性を検証していきます。”