米国臨床腫瘍学会に参加していますオンコロの前原です。ASCO2018 3日目速報版レポートとなります。
目次
淡明性腎細胞がんに対する1次治療、ぺムブロリズマブ単剤に対するフェーズ2試験 #4500
KEYNOTE-427 で淡明性腎細胞がんに対するぺムブロリズマブのフェーズ2試験結果が発表された。
同試験はコホートAが淡腎細胞がん、コホートBはその他の腎細胞がんに分けられており、今回はコホートAについて。
・患者数は110人でPD-L1の発現有無は IHC 22C3 抗体が用いられ評価された
なお、PD-L1発現は、腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージに発現があるかないかが評価されている
・今回の臨床試験発表のデータは、2018年3月12日時点までの治療状況であり、フォローアップ期間は12.1ヶ月。
・主要評価項目の奏効率は38.2%。完全奏効を得た患者は、3名(2.7%)、部分奏効は39名(35.5%)病勢進行が見られた患者は31名(28.2%)だった
・74名(67.3%)の患者で腫瘍量の減量が確認され、さらに、治療前から80%以上腫瘍量が減少した患者は16名(14.5%)確認された
・治療奏効期間は医学臨床統計学上未到達で、6ヶ月以上奏効が得られた患者は74.8%
また、低リスク患者の6ヶ月以上奏効が得られた患者は76.5%、中間リスクと高リスク患者では71.6%であった
・PD-L1発現別の評価では、1%以上の奏効率が50%、1%未満は26.4%となった
・副次評価項目の無増悪生存率は6ヶ月時点で60.2%、全生存率は6ヶ月時点で88.4%
・副作用発現内容は今回の臨床試験で特別なものは認められず、既存のものとほぼ同等と評価された。注目すべき副作用では、グレード3-5で、肺臓炎1名(0.9%)、腸炎3名(2.7%)、肝炎2名(1.8%)、重度の皮疹2名(1.8%)という内容であった
今後は、同コホートAの継続的フォローアップと淡明性腎細胞がん
以外のコホートBの評価が行われていくとのこと。
進行または転移性非小細胞肺がん KEYNOTE-042 フェーズ3試験 プレナリーセッション#LBA4
進行または転移性非小細胞肺がんに対するぺムブロリズマブ1次治療、PD-L1発現(腫瘍浸潤PD-L1)1%以上で主要評価項目の全生存期間を有意に延長させた。
・患者数は1274名で637名がぺムブロリズマブ群、パクリタキセル+カルボプラチンもしくはカルボプラチン+ペメトレキセド(以下、プラチナベース化学療法)群に637名がランダムに割り付けられた
・両群でPD-L1 50%以上発現患者数は599名(47.0%)、20%以上発現患者数は818名(64.2%)だった
・フォローアップ期間は12.8ヶ月、その後も治療継続している患者はぺムブロリズマブ群で13.7%、プラチナベース化学療法群は4.9%
PD-L1の発現が1%以上の患者でも全生存期間を有意に延長し、標準治療のひとつになると結論付けられた
全生存期間結果の臨床データはアブストラクトから引用し、以下画像にまとめた
転移性非小細胞扁平上皮がん KEYNOTE-407 フェーズ3#105
ぺムブロリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセルもしくはナブ-パクリタキセルの3剤併用(以下、ぺムブロリズマブ群)はプラセボ+カルボプラチン+パクリタキセルもしくはナブ-パクリタキセル(以下、プラセボ群)に比べ、転移性非小細胞扁平上皮がんの1次治療で2つの主要評価項目である無増悪生存期間と全生存期間を有意に延長させた。
559名の患者がランダムに1:1に割り付けられ、ぺムブロリズマブ群278名、プラセボ群281名。
全生存期間はぺムブロリズマブ群が暫定であるが、15.9ヶ月、プラセボ群は11.3ヶ月であり、死亡リスクを36%有意に減少させた。
PD-L1発現率別の全生存期間は、発現率が1%未満でぺムブロリズマブ群は暫定であるが15.9ヶ月、プラセボ群10.2ヶ月で死亡リスクを39%有意に減少、発現率が1-49%でぺムブロリズマブ群は暫定であるが14.0ヶ月、プラセボ群11.6ヶ月で死亡リスクを43%有意に減少、発現率が50%以上でぺムブロリズマブ群、プラセボ群ともに医学臨床統計学上未到達で暫定であるが死亡リスクを36%有意に減少させた。
無増悪生存期間はぺムブロリズマブ群8.4ヶ月、プラセボ群4.8ヶ月であり、病勢進行または死亡リスクを44%減少させた。
副次評価項目のひとつである奏効率は、ぺムブロリズマブ群で58.4%、プラセボ群は35.0%であり有意にぺムブロリズマブ群で改善させた。さらに治療奏効期間はぺムブロリズマブ群は暫定であるが7.7ヶ月、プラセボ群4.8ヶ月だった。
安全性解析のひとつ副作用関連は治療中止と注入過敏反応(インフュージョンリアクション)がぺムブロリズマブ群で高かったが、有害事象発現頻度は両群ともに特別なものはなく、既知のものとほとんどが類似していた。
以上から、転移性非小細胞扁平上皮がんの1次治療において、PD-L1発現頻度に関わらずぺムブロリズマブ群で有効性を示し、新たな標準治療のひとつとなりうると結論付けられた。
転移性腎細胞がん プレナリーセッション#LBA3
転移性腎細胞がんに対する腎摘出術とスニチニブの併用療法とスニチニブ単剤治療の非劣勢フェーズ3試験
450名の患者を対象にフォローアップ(観察)期間は50.9ヶ月。
腎摘出術を行いその後4-6週後からスニチニブを投与する併用群(以下併用群)に226名の患者が割り付けられ、スニチニブ単独群に224名の患者が割り付けられた。
併用群に対してスニチニブ単独群の治療効果が劣らないことを証明する非劣勢試験。
統計学的な非劣勢マージンは1.20以下と計画された。
結果、3年全生存率は併用群で25.9%、スニチニブ単独群で29.1%だった。
スニチニブ群の非劣勢マージンは最も高い値で1.10であり、事前に計画された非劣勢マージン1.20を超えなかった。
従って、転移性腎細胞がんに対して、腎摘出術を行わずスニチニブ単剤で治療することの有効性は劣らないことが証明された。
この臨床試験結果は、6月3日(米国・シカゴ時間)
ニューイングランドジャーナルオブメディスンに
論文が掲載された。