2018年11月20日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて放射線治療に伴う神経因性疼痛を有する頭頚部がん患者に対するプレガバリン(商品名リリカ;以下リリカ)単剤療法の有効性を比較検証した第Ⅱ相試験(NCT01869569)の結果がSun Yat-Sen Memorial Hospital of Sun Yat-Sen Universit・Jingru Jiang氏らにより公表された。
本試験は、放射線治療歴のある頭頚部がんでNumerical Rating Scale(略語NRS;以下NRS)により神経因性疼痛のレベル4以上(NRSでは痛みを0から10の11段階に分け、痛みが全くないのを0、考えられるなかで最悪の痛みを10として点数化している)の患者(N=128人)に対して1~7日目に1日2回リリカ75mg、8~14日目に1日2回リリカ150mg、15~28日目に1日2回リリカ(症状に応じた用量)、29日目以降に1日2回リリカ(症状に応じた用量)単剤療法を投与する群(N=64人)、または同用法用量のプラセボ単剤療法を投与する群(N=64人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてベースライン時点より16週間後のNRSの変化を比較検証した二重盲検下プラセボ対照比較の第Ⅱ相試験である。
本試験が実施された背景として、放射線治療歴のある頭頚部がん患者は神経因性疼痛を発症するが、その多くは急性的なものである。そのため、急性疼痛に対する治療方法は複数の臨床試験によりその治療法が確立されているが、慢性疼痛は稀であるため未だにその治療方法が確立していない。そこで、本試験によりリリカ単剤療法の有効性が検証された。
本試験に登録された患者背景は以下の通りである。
・年齢中央値はリリカ群55.5±8.7歳に対してプラセボ群56.8±8.1歳。
・性別はリリカ群で女性37.5%(N=24人)に対してプラセボ群で女性42.2%(N=27人)。
・原発巣腫瘍部位はリリカ群で上咽頭43.8%(N=28人)、口腔14.1%(N=9人)、喉頭10.9%(N=7人)、中咽頭7.8%(N=5人)、副鼻腔3.1%(N=2人)、その他20.3%(N=13人)に対してプラセボ群で上咽頭46.9%(N=30人)、口腔12.5%(N=8人)、喉頭15.6%(N=10人)、中咽頭3.1%(N=2人)、副鼻腔1.6%(N=1人)、その他20.3%(N=13人)。
・放射線量はリリカ群70Gy(68-72)に対してプラセボ群69Gy(67-71)。
・放射線治療期間はリリカ群47.1±4.8日に対してプラセボ群46.8±5.0日。
・ベースライン時点のNRSはリリカ群6.47±1.50に対してプラセボ群6.34±1.37。
・放射線療法完了時点より最初の神経因性疼痛を発症するまでの期間中央値はリリカ群4.0年(1.5-7.0)に対してプラセボ群5.0年(4.0-6.5)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果以下の通りである。
■主要評価項目であるベースライン時点より16週間後のNRSの変化は、リリカ群-2.44±1.52に対してプラセボ群-1.58±1.25、調整後のその差はリリカ群で-0.87(95%信頼区間:0.30-1.44,P=0.003)改善した。
■ベースライン時点よりも16週間後のNRSが30%以上(臨床的意義のある)減少した割合はリリカ群59.4%に対してプラセボ群32.8%(P=0.006)、ベースライン時点よりも16週間後のNRSが50%以上(非常に臨床的意義のある)減少した割合はリリカ群29.7%に対してプラセボ群7.8%(P=0.003)を示した。
■一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はリリカ群で54.7%(N=35人)に対してプラセボ群で45.3%(N=29人)を示した。プラセボ群よりもリリカ群にて多くの患者で発症した全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は目眩がリリカ群18.8%に対してプラセボ群6.3%、傾眠がリリカ群20.3%に対してプラセボ群4.7%。
以上の第Ⅱ相試験の結果より、Jingru Jiang氏らは以下のように結論を述べている。“放射線治療に伴う神経因性疼痛を有する患者に対してリリカ単剤療法を投与することで、その痛みは緩和する可能性が本試験より示唆されました。”