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末梢性T細胞性リンパ腫患者に対するオーロラAキナーゼ阻害薬Alisertib単剤療法、客観的奏効率、無増悪生存期間を統計学有意に改善しない

2019年2月1日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて治療歴のある再発難治性末梢性T細胞性リンパ腫患者に対する経口の選択的オーロラAキナーゼ阻害薬であるAlisertib(開発コード:MLN8237)単剤療法有効性安全性を比較検証した第III祖試験(NCT01482962)の結果がColumbia University Medical Center・Owen A. O’Connor氏らにより公表された。

本試験は、治療歴のある再発難治性末梢性T細胞性リンパ腫患者に対して21日を1サイクルとして1~7日目に1日2回Alisertib 50mg単剤療法を投与する群(N=138人)、または主治医選択の単剤療法(プララトレキサート、ゲムシタビン、ロミデプシン)を投与する群(N=133人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として客観的奏効率ORR)、無増悪生存期間PFS)、副次評価項目として全生存期間OS)、治療関連有害事象(TRAE)発症率などを比較検証した国際多施設共同非盲検下の第III相試験である。

本試験が実施された背景として、再発難治性末梢性T細胞性リンパ腫の無増悪生存期間(PFS)中央値は3.1ヶ月、全生存期間(OS)中央値は5.5ヶ月と予後不良のためである。本疾患のファーストライン治療としてはアントラサイクリン系抗がん剤ベースの化学療法が施行される機会が多いが、その奏効率は25%程度である。以上の背景より、他の臨床試験で有効性、安全性が証明されていたオーロラAキナーゼ阻害薬であるAlisertibの有用性が本試験により検証された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はAlisertib群63歳(19-82歳)に対して主治医選択治療群63歳(27-86歳)。性別はAlisertib群で男性67%(N=92人)、女性33%(N=46人)に対して主治医選択治療群で男性65%(N=86人)、女性35%(N=47人)。人種はAlisertib群で白人83%(N=115人)、黒人6%(N=8人)、アジア人2%(N=3人)、その他5%(N=7人)に対して主治医選択治療群で白人86%(N=114人)、黒人6%(N=8人)、アジア人2%(N=2人)、その他5%(N=7人)。

ベースライン時点のECOG Performance StatusはAlisertib群でスコア0が39%(N=54人)、スコア1が46%(N=63人)、スコア2が14%(N=20人)、スコア3が1%未満(N=1人)に対して主治医選択治療群でスコア0が31%(N=41人)、スコア1が47%(N=63人)、スコア2が22%(N=29人)、スコア3が0%。IPIスコアはAlisertib群でスコア0が2%(N=3人)、スコア1が14%(N=19人)、スコア2が38%(N=53人)、スコア3が36%(N=49人)、スコア4が10%(N=14人)、スコア5が0%に対して主治医選択治療群でスコア0が4%(N=5人)、スコア1が17%(N=22人)、スコア2が27%(N=36人)、スコア3が38%(N=50人)、スコア4が13%(N=17人)、スコア5が2%(N=3人)。

末梢性T細胞性リンパ腫の病型サブタイプはAlisertib群でPTCL-NOSが45%(N=62人)、AITLが22%(N=31人)、ALK陰性ALCLが5%(N=7人)、菌状息肉症が6%(N=8人)、腸管症関連T細胞リンパ腫が2%(N=3人)、鼻型NK/T 細胞リンパ腫が1%(N=2人)、ALK陽性ALCLが1%未満(N=1人)、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫0%に対して主治医選択治療群でPTCL-NOSが42%(N=56人)、AITLが23%(N=30人)、ALK陰性ALCLが8%(N=10人)、菌状息肉症が6%(N=8人)、腸管症関連T細胞リンパ腫が2%(N=3人)、鼻型NK/T 細胞リンパ腫が2%(N=2人)、ALK陽性ALCLが1%未満(N=1人)、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫1%未満(N=1人)。

治療歴中央値はAlisertib群2レジメン(1-11)に対して主治医選択治療群2レジメン(1-9)。以上のように両群間における患者背景に大きな偏りはなかった。

本試験の結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はAlisertib群33%(N=34/102人)に対して主治医選択治療群45%(N=41/92人)、主治医選択治療群に比べてAlisertib群のオッズ比は0.60(95%信頼区間:0.33-1.08)を示し、両群間における統計学有意な差は確認されなかった。

また、無増悪生存期間(PFS)中央値はAlisertib群115日に対して主治医選択治療群104日、主治医選択治療群に比べてAlisertib群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを13%減少(HR:0.87,95%信頼区間:0.637-1.178)した。全生存期間(OS)中央値はAlisertib群415日に対して主治医選択治療群367日、主治医選択治療群に比べてAlisertib群で死亡(OS)のリスクを2%減少(HR:0.98,95%信頼区間:0.707-1.369)した。

一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はAlisertib群88%に対して主治医選択治療群94%の患者で確認された。なお、Alisertib群で最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症43%(主治医選択治療群25%)、血小板減少症29%(主治医選択治療群27%)、貧血33%(主治医選択治療群11%)の患者で確認された。

以上の第III祖試験の結果よりColumbia University Medical Center・Owen A. O’Connor氏らは以下のように結論を述べている。”再発難治性末梢性T細胞性リンパ腫患者に対する経口の選択的オーロラAキナーゼ阻害薬であるAlisertib単剤療法は、他の治療方法に比べて客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善できませんでした。”

Randomized Phase III Study of Alisertib or Investigator’s Choice (Selected Single Agent) in Patients With Relapsed or Refractory Peripheral T-Cell Lymphoma(Journal of Clinical Oncology Published online February 01, 2019.)

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