・中高リスクを有する早期子宮内膜がん患者が対象の第3相試験
・膣内照射+化学療法併用の有効性・安全性を比較検証
・全骨盤照射と同等の無再発生存率を示し、治療関連有害事象に大きな違いはなかった
2019年4月17日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて中高リスクを有する早期子宮内膜がん患者に対するの膣内照射+化学療法併用の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT00807768)の結果がUniversity of KentuckyのMarcus E. Randall氏らにより公表された。
本試験は、中高リスクを有する早期子宮内膜がん患者を対象に、膣内照射+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法を投与する群(略称VCB/C,N=300人)、または全骨盤照射を行う群(略称RT,N=301人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無再発生存率(RFS)を比較検証した第3相試験である。
本試験が実施された背景として、米国では新規に63,230人の患者が子宮内膜がんを発症し、2018年度は1,1350人が死亡している。現在、早期子宮内膜がん患者に対して術後放射線療法が実施されているが、その再発リスクは高い。以上の背景より、中高リスクを有する早期子宮内膜がん患者に対して膣内照射+化学療法併用の有効性、安全性が検証された試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢
VCB/C群=20-29歳が0%、30-39歳が1.7%、40-49歳が3.7%、50-59歳が24.0%、60-69歳が45.7%、70-79歳が22.0%、80-89歳が3.0%
RT群=20-29歳が0.3%、30-39歳が1.3%、40-49歳が5.6%、50-59歳が31.6%、60-69歳が38.2%、70-79歳が20.9%、80-89歳が2.0%
Performance Status
VCB/C群=スコア0が76.0%、スコア1が23.0%、スコア2が1.0%
RT群=スコア0が78.1%、スコア1が20.3%、スコア2が1.7%
がんの組織学的分類
VCB/C群=漿液性がん14.0%、明細胞4.3%、上皮性混合5.7%、未分化0.3%、腺がん(NOS)0.3%、粘液性0.3%、その他1.0%
RT群=漿液性がん15.3%、明細胞5.0%、上皮性混合4.7%、未分化0.7%、腺がん(NOS)0.3%、粘液性0%、その他0.3%
ステージ分類
VCB/C群=ステージIが75.0%、ステージIIが24.7%、ステージIIIが0.3%、ステージIVが0%
RT群=ステージIが75.1%、ステージIIが24.6%、ステージIIIが0%、ステージIVが0.3%
なお、両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験のフォローアップ期間中央値53ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である60ヶ月無再発生存率(RFS)はVCB/C群でハザード比0.76(95%信頼区間:0.70-0.81)に対してRT群でハザード比0.76(95%信頼区間:0.70-0.81)を示し、RT群に比べてVCB/C群で60ヶ月間の再発または死亡のリスク(RFS)を8%減少(HR:0.92,95%信頼区間:0.69-1.23)。また、60ヶ月全生存率(OS)はVCB/C群でハザード比0.85(95%信頼区間:0.81-0.90)に対してRT群でハザード比0.87(95%信頼区間:0.83-0.91)を示した。
一方の安全性として、両群間で発症した治療関連有害事象(TRAE)に大きな違いはなかった。なお、神経毒性の発現の増加はRT群よりもVCB/C群において多くの患者で確認された。
以上の第3相試験の結果よりMarcus E. Randall氏らは以下のように結論を述べている。”中高リスクを有する早期子宮内膜がん患者に対する膣内照射+化学療法併用は、全骨盤照射と同等の無再発生存率(RFS)を示し、有効性に違いはありませんでした。”