・EGFR遺伝子変異陽性の進行性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・第三世代EGFR阻害薬であるASP8273単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・エルロチニブもしくはゲフィチニブに対して無増悪生存期間の優越性を示せず
2019年5月9日、医学誌『Annals of Oncology』にてEGFR遺伝子変異陽性の進行性非小細胞肺がん患者に対する第三世代EGFR阻害薬であるASP8273単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT02588261)の結果がThe Sidney Kimmel Comprehensive Cancer CenterのR J Kelly氏らにより公表された。
本試験は、EGFR遺伝子変異陽性の局所進行性/転移性/切除不能非小細胞肺がん患者(N=530人)に対して1日1回ASP8273 300mg単剤療法を投与する群(N=267人)、または1日1回エルロチニブ150mgもしくは1日1回ゲフィチニブ250mg単剤療法を投与する群(N=263人)に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などを比較検証した国際多施設共同オープンラベルの第3相試験である。
本試験が実施された背景として、ASP8273は新規の低分子不可逆的チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であり、上皮成長因子受容体(EGFR)を特異的に阻害することが他の臨床試験で明らかになっている。以上の背景より、EGFR遺伝子変異陽性の進行性非小細胞肺がん患者に対する本治療の有効性が検証された。
本試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はASP8273群9.3ヶ月(95%信頼区間:5.3-11.1ヶ月)に対してエルロチニブもしくはゲフィチニブ群9.6ヶ月(95%信頼区間:8.8ヶ月-未到達)、エルロチニブもしくはゲフィチニブ群に対するASP8273群の病勢進行または死亡(PFS)ハザード比1.611(P=0.992)を示した。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はASP8273群33%(95%信頼区間:27.4%–39.0%)に対してエルロチニブもしくはゲフィチニブ群47.9%(95%信頼区間:41.7%–54.1%)。奏効持続期間(DOR)中央値はASP8273群9.2ヶ月に対してエルロチニブもしくはゲフィチニブ群9.0ヶ月、両群間でほぼ同等であった。
一方の安全性としてグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はASP8273群54.7%に対してエルロチニブもしくはゲフィチニブ群43.5%を示し、独立データモニタリング委員会の判断によりASP8273群のエルロチニブもしくはゲフィチニブ群に対する有効性は乏しく、有害事象(AE)の発現も多いため試験中止の勧告を提出した。
以上の第3相試験の結果よりThe Sidney Kimmel Comprehensive Cancer CenterのR J Kelly氏らは以下のように結論を述べている。”EGFR遺伝子変異陽性の局所進行性/転移性/切除不能非小細胞肺がん患者に対するASP8273単剤療法は、エルロチニブもしくはゲフィチニブに対して無増悪生存期間(PFS)で優越性を示すことができず、有害事象(AE)の発現も高率でした。”