・未治療のALK陽性非小細胞肺がんアジア人患者が対象の第3相試験
・ALK阻害薬アレセンサ単剤療法の有効性・安全性をザーコリと比較検証
・アレセンサ群で病勢進行または死亡のリスクが統計学的有意に78%減少した
2019年5月、医学誌『The Lancet Respiratory Medicine』にて未治療のALK陽性非小細胞肺がんアジア人患者に対するファーストライン治療としてのALK阻害薬であるアレクチニブ(商品名アレセンサ;以下アレセンサ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のALESIA試験(NCT02838420)の結果がTongji University School of MedicineのCaicun Zhou氏らにより公表された。
ALESIA試験とは、未治療のALK陽性非小細胞肺がんアジア人患者(N=187人)に対するファーストライン治療として1日2回アレセンサ600mg単剤療法を投与する群(N=125人)、または1日2回クリゾチニブ250mg(商品名ザーコリ;以下ザーコリ)単剤療法を投与する群(N=62人)に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として治験医師評価による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、中枢神経系(CNS)の無増悪期間(TTP)を比較検証したオープンラベル無作為化の第3相試験である。
本試験が実施された背景として、非小細胞肺がんを発症する患者の内約5%はALK融合遺伝子陽性である。別の第3相のALEX試験において未治療のALK陽性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としてのアレセンサ単剤療法は、ザーコリ単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善することが示されている。以上の結果より、ALK陽性非小細胞肺がんアジア人患者に対しても同様の結果を示すかどうかを検証することを目的にして本試験が実施された。
本試験のフォローアップ期間中央値アレセンサ群16.2ヶ月(13.7-17.6ヶ月)、ザーコリ群15.0ヶ月(12.5-17.3ヶ月)時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である治験医師評価による無増悪生存期間(PFS)中央値はアレセンサ群で未到達に対してザーコリ群で11.1ヶ月、アレセンサ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを統計学的有意に78%減少した(HR:0.22,95%信頼区間:0.13-0.38,P<0.0001)。また、独立評価委員会(IRC)による無増悪生存期間(PFS)中央値においてもアレセンサ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを統計学的有意に63%減少した(HR:0.37,95%信頼区間:0.22-0.61,P<0.0001)。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はアレセンサ群91%(N=114/125人)に対してザーコリ群77%(N=48/62人)、アレセンサ群でより長い客観的奏効率(ORR)を示した(HR:0.22,95%信頼区間:0.12-0.40,P<0.0001)。また、中枢神経系(CNS)転移を有する患者における客観的奏効率(ORR)はアレセンサ群73%(N=32/44人)に対してザーコリ群22%(N=5/23人)、奏効持続期間(DOR)中央値はアレセンサ群14.7ヶ月に対してザーコリ群12.6ヶ月を示した。
一方の安全性として、グレード3~5の治療関連有害事象(TRAE)発症率はアレセンサ群29%(N=36/125人)に対してザーコリ群48%(N=30/62人)、重篤な有害事象(SAE)発症率はアレセンサ群15%(N=19/125人)に対してザーコリ群26%(N=16/62人)の患者で確認された。
以上のALESIA試験の結果よりTongji University School of Medicine・CaicunZhou氏らは以下のように結論を述べている。”未治療のALK陽性非小細胞肺がんアジア人患者に対するファーストライン治療としてのアレセンサ単剤療法は、ザーコリ単剤療法に比べて約2倍程の無増悪生存期間(PFS)の改善を示しました。”