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悪性胸膜中皮腫 キイトルーダの第1相中間解析で奏効率20% Lancet Oncol

プログラム細胞死受容体1(PD-1)標的抗体であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が、治療歴のある悪性胸膜中皮腫患者に良好な忍容性を示し、単剤で抗腫瘍効果をもたらした。ペンシルバニア大学Penn PresbyterianメディカルセンターのEvan W Alley氏らが第1相試験(KEYNOTE-028)の中間解析結果を2017年3月10日のLancet Oncol Onlineに発表した。

目次

固形がん対象の第1相試験 ~悪性胸膜中皮腫患者は25人、PD-L1発現陽性患者対象にキイトルーダを2週毎最長2年間投与~

6カ国、13施設で実施されている第1b相単群非無作為化非盲検試験(KEYNOTE-028、NCT02054806)で、プログラム細胞死受容体リガンド1(PD-L1発現陽性で適切な治療法がない進行固形がん患者を対象として、最長2年間にわたりキイトルーダ10mg/kgを2週ごとに静注した。

悪性胸膜中皮腫患者に対する安全性

中間解析で悪性胸膜中皮腫患者に対する良好な忍容性が認められた。2016年6月20日のデータカットオフまでに悪性胸膜中皮腫患者25人にキイトルーダが投与された。治療関連有害事象は16人(64%)に発現し、主な有害事象は疲労(6人[24%])、悪心(6人[24%])、および関節痛(5人[20%])であった。グレード3の治療関連有害事象は5人(20%)に認められた。グレード3横紋筋融解症、グレード2の甲状腺機能低下症、グレード3の虹彩毛様体炎、グレード1の多形性紅斑、グレード3の紅斑、およびグレード2の免疫関連反応を理由として3人(12%)が投与を中断した。治療関連死、または治療関連有害事象を理由とする中止例はなかった。

奏効率は20%、奏効持続期間は12か月

追跡期間中央値18.7カ月で、奏効率は20%(5/25人)、部分奏効(PR)が5人に認められた。加えて病勢安定SD)が52%(13/25人)に認められ、PDとSD(持続期間6カ月以上)を合わせた病勢コントロール率は40%であった。奏効は迅速、かつ持続的で、奏効到達期間中央値は1.9カ月、奏効持続期間中央値は12.0カ月であった。SDの持続期間中央値は5.6カ月であった。データカットオフ時点では2人が治療を継続していた。

無増悪生存(PFS)期間中央値は5.4カ月で、治療6カ月後のPFS率は45.8%、12カ月後のPFS率は20.8%と算出された。全生存期間OS)中央値は18カ月で、治療6カ月後の全生存率は83.5%、12カ月後の全生存率は62.6%と算出された。

中皮腫の適応可能性を探る第2相試験を実施・計画中

悪性胸膜中皮腫に対する適応妥当性が示唆され、実用性を検証する第2相試験が実施されている。すでに、2016年の世界肺癌学会(WCLC)では第2相試験(NCT02707666)の中間結果が発表されており、また、悪性中皮腫患者を含む第2相バスケット試験(KEYNOTE-158、NCT02628067)は二次治療としてのキイトルーダの有効性を予測するバイオマーカーに着目してデザインされている。標準的化学療法と併用する一次治療としての第2相試験(NCT02784171)も計画中である。

これらの試験では、キイトルーダは固定用量で最大200mg、3週ごとの静注でデザインされているが、本試験(KEYNOTE-028)では体重あたり10mg/kgを2週ごとに静注する用法用量を採用した。薬物動態集団解析の報告では、固定用量200mg、体重あたり2mg/kgの3週ごとの静注を比較した場合、薬物動態や曝露量、体内分布が同様とされている。本試験の用法用量で悪性胸膜中皮腫患者に対する安全性が確認され、一定の抗腫瘍効果を得ることができた。

なお、日本で承認されているキイトルーダの用法用量は、悪性黒色腫成人患者の場合は体重あたり2mg/kg、非小細胞肺がん(NSCLC)成人患者の場合は固定200mgで、いずれも3週ごとに30分かけて点滴静注する。

記事:可知 健太
この記事に利益相反はありません。

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