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進行期ホジキンリンパ腫への新しい一次治療への道
ABCDはアルファベットの順番であり、この順番は世界中どこでも不変である。
そして、このABCDの順番と同じくらい不変であるのが、古典的ホジキンリンパ腫の一次治療の標準治療であるABVD療法である。
ABVD療法とは、下記4種類の抗がん剤である
・ドキソルビシン(商品名:アドリアシン / Adriamycin)
・ブレオマイシン(商品名:ブレオ / Bleomycin)
・ビンブラスチン(商品名:エクザール / Vinblastine)
・ダカルバジン(商品名:ダカルバジン / Dacarbazine)
以上を組み合わせた治療方法であり、各抗がん剤の頭文字だけを取った名称である。
ABVD療法は1992年に一流医学誌『The New England Journal of Medicine』でその有用性が報告されて以来、進行期を問わず古典的ホジキンリンパ腫における標準治療の座を確保している。
ここ20年間、Stanford V療法、BEACOPP療法をはじめ、何種類もの抗がん剤併用レジメンがABVD療法の治療成績を上回ろうと挑戦した。
中にはAVBD療法よりも無病悪生存期間(PFS)が優れることを証明した治療方法もあったが、効果に比例してその毒性も増強されたため、古典的ホジキンリンパ腫におけるAVBD療法の座は揺るがなかったのだ。
20年間越。古典的ホジキンリンパ腫の一次治療変更の可能性示唆 – ECHELON-1試験 –
なぜなら、ブレンツキシマブベドチン(商品名:アドセトリス / Blentuximab vedotin)+AVD療法(ABVDからブレオマイシンを除いた治療方法)が、AVBD療法と比較して無病悪生存期間(PFS)を有意に延長することを証明したからである。
もちろん、AVBD療法と比較して問題となるような副作用も見られていない。
この可能性を示唆した科学的根拠は、未治療の進行期古典的ホジキンリンパ腫患者1334名に対してAVD療法+ブレンツキシマブベドチン、又はAVBD療法を投与し、主要評価項目である無病悪生存期間(PFS)を直接比較検証した第Ⅲ相試験(ECHELON-1試験)に基いている。
先述の通り、AVBD療法群に対してAVD療法+ブレンツキシマブベドチン群は無病悪生存期間(PFS)を有意に延長した。(ハザード比:0.770、p値=0.035)。さらに、その安全性もブレンツキシマブベドチン特有の副作用である発熱性好中球減少、末梢性ニューロパチーの発現率がAVBD療法群に比較して多く発現する以外は、AVDそれぞれの薬剤で知られている既存の副作用が見られるだけであった。
一方、AVBD療法群のブレオマイシンを除いていないレジメンのために、発熱性好中球減少、末梢性ニューロパチーの代わりに肺毒性の発現、重症化が見られた。
肺毒性は間質性肺炎、肺線維症などを発症させる可能性があるため、肺疾患の既往歴のある人、喫煙者などはブレオマイシンが投与しにくいのだ。
有効性も安全性も非常に優れているAVBD療法ではあったが、ブレオマイシンによる肺毒性の副作用は臨床での課題の1つとされてきた。しかし、AVD療法+ブレンツキシマブベドチン療法はこの課題を克服する。さらに、無病悪生存期間(PFS)がAVBD療法よりも有意に延長する。
以上のことから、進行期古典的ホジキンリンパ腫の一次治療の座を、AVD療法+ブレンツキシマブベドチン群がAVBD療法から奪う可能性は十二分にあるだろう。
参考資料
1)武田薬品工業株式会社 ニュースリリース 2017年6月27日
2) SeattleGenetics Press Resease (JUN 26, 2017)