2017年11月9日、医学誌『The Lancet Oncology』にて切除後の早期非小細胞肺がん患者に対する術後療法としてのベバシズマブ(商品名アバスチン)+プラチナ製剤ベースの化学療法の有効性を検証したE1505試験(NCT00324805)の結果が公表された。
E1505試験とは、手術後6-12週間後のステージIB-IIIA非小細胞肺がん患者(N=1501人)に対する術後療法としてアバスチン+シスプラチン+主治医判断の化学療法(ビノレルビン、ドセタキセル、ゲムシタビンもしくはペメトレキセド)併用療法を投与する群(N=752人)、またはシスプラチン+主治医判断の化学療法(ビノレルビン、ドセタキセル、ゲムシタビンもしくはペメトレキセド)併用療法を投与する群(N=749人)に1:1の割合で振り分け、主要評価項目である全生存期間(OS)を比較検証した国際多施設共同オープンラベルの第III相試験である。
なお、投与スケジュールとしてアバスチン投与群では21日間を1サイクルとしてアバスチン15mg/kgを1年間投与+最初の1サイクルの1日目にシスプラチン+ 主治医判断の化学療法(ビノレルビン、ドセタキセル、ゲムシタビンもしくはペメトレキセド)を投与、アバスチン非投与群では 21日間を1サイクルとして1日目にシスプラチン+ 主治医判断の化学療法(ビノレルビン、ドセタキセル、ゲムシタビンもしくはペメトレキセド)を4サイクル投与している。
本試験の結果、フォローアップ期間中央値50.3ヶ月時点における主要評価項目である全生存期間(OS)はアバスチン投与群85.8ヶ月に対してアバスチン非投与群未到達(ハザードリスク比0.99,P=0.90)であった。以上の結果より、切除後の早期非小細胞肺がん患者に対する術後療法として化学療法にアバスチンを上乗せしても全生存期間(OS)は改善しないことが証明された。
一方の安全性としては、グレード3以上の有害事象(AE)が確認された患者はアバスチン投与群83%に対してアバスチン非投与群67%であった。また、アバスチン投与群で増加傾向にあった有害事象(AE)としては高血圧、好中球減少症であった。なお、治療中に死亡が確認された患者はアバスチン投与群19人、アバスチン非投与群15人で、少なくとも治療関連性のある死亡はそれぞれ10人、3人であった。
以上の臨床試験の有効性、安全性の結果を受けて、治験医師らは以下のように述べている。”切除後の早期非小細胞肺がん患者に対する術後療法としての化学療法に対するアバスチンの上乗せは全生存期間(OS)を改善しませんでした。以上の結果より、術後療法としてのアバスチンの臨床的意義は切除後早期非小細胞肺がん患者さんに対しては確認されませんでした。”