2017年12月1日、医学誌『Japanese Journal of Clinical Oncology』にて化学療法を受けている進行性大腸がん患者に対する心理的苦痛と生活の質の関連性、支持療法の必要性を検証した横断研究の結果が名古屋市立大学病院・消化器一般外科・助教である坂本 宣弘氏らにより公表された。
本試験では、外来で化学療法を受けている進行性大腸がん患者(N=100人)に対してがんそのものに伴う症状、治療による副作用の予防策や症状を軽減させる治療である支持療法の必要性についての患者アンケート(SCNS-SF34)を実施している。
本アンケートの内容は健康関連のシステム・情報、心理的要因、身体的要因、患者ケアとサポート、セクシュアリティに関する5つの要素で構成されており、先月受けた支持療法の必要性の有無を5つのレベル(1:no need; not applicable,2:no need; satisfied,3:low need,4:moderate need,5:high need)で患者は回答している。なお、回答するスコアが高ければ高いほど、がん患者にとって必要な要素であることを意味している。
本試験に登録された患者背景は、年齢中央値64歳(39–79歳)、女性34%(N=34人)、Performance status(PS)0または1が99%(N=99人)、フルタイム労働者28%(N=28人)、既婚者80%(N=80人)であった。
本試験の結果、がん患者が最も必要としていることはがんが進行することに対する恐怖を和らげてくれる心理面でのサポートであった。次いで、がん患者の身近な人の心配に対する懸念、自分ではコントロールできない治療結果に対する心配、不安、不確実な将来など、心理的な要因に関するサポートが上位を占めていた。また、がん患者が必要としている要素は心理的苦痛(P <0.001)、生活の質(P <0.001)が統計学的有意に関連していた。特に、この関連性は性別が女性である患者にとって重要な意味があることを示していた。
以上の結果より、がん患者に対しては心理的苦痛を取り除き、生活の質を高めるような治療的介入を取り入れることが、患者の治療満足度を高めるうえで重要であることが示唆された。特に、女性患者である場合、彼女らが求めていることを慎重に評価すべきことは重要である。