2018年1月25日、医学誌『The Lancet Oncology』にて前治療歴のある再発胸腺がん患者に対するペムブロリスマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性を検証した第II相試験(NCT02364076)の結果がLombardi Comprehensive Cancer Center・ Giuseppe Giaccone氏らにより公表された。
本試験は、少なくとも1レジメン以上の治療歴のある再発胸腺がん患者(N=41人)に対して3週間に1回の投与間隔でキイトルーダ200mg単剤療法を最大2年間投与し、主要評価項目として部分奏効(PR)+完全奏効(CR)として定義された全奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、有害事象(AE)発症率を検証したシングルアームオープンラベルの第II相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値57歳(25-80)、男性70%、パフォーマンスステータス(PS)0が48%、1が48%。病勢進行期はステージIIIが3%、IVa15%、IVb82%。転移個数中央値は2(1-6)であり、その部位は肝転移38%、脳転移15%、骨転移22%。前治療歴中央値は2(1-6)であり、胸腺切除52%、胸部放射線58%。
上記背景を有する患者に対してキイトルーダ単剤療法を投与したフォローアップ期間中央値20ヶ月時点における結果、主要評価項目である全奏効率(ORR)は22.5%(95%信頼区間:10.8–38.5)を示した。そして、奏効の内訳としては完全奏効(CR)3%(N=1人)、部分奏効(PR)20%(N=8人)、病勢安定(SD)53%(N=21人 *評価不能1人)、病勢進行(PD)25%(N=10人)であった。そして、部分奏効(PR)+完全奏効(CR)+病勢安定(SD)として定義された病勢コントロール率(DCR)は75%(N=30人)を示した。
また、部分奏効(PR)、完全奏効(CR)を達成した患者9人おける初回奏効より測定した治療持続期間(DOR)中央値は22.4ヶ月(95%信頼区間:12.3-34.7ヶ月)、病勢安定(SD)を達成した患者21人における治療持続期間(DOR)中央値は6.8ヶ月(95%信頼区間:1.8-11.7ヶ月)を示した。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は4.2ヶ月(95%信頼区間:2.9-10.3ヶ月)、全生存期間(OS)央値は24.9ヶ月(95%信頼区間:15.5-未到達)、1年無増悪生存率(PFS)は29%(17.6-48.5%)、1年無全生存率(OS)は71%(57.6-87.1%)を示した。
一方の安全性としては、最も一般的に確認されたグレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)は疲労40%(N=16人)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーセ)上昇28%(N=11人)、ALP(アルカリ性フォスファターゼ)上昇25%(N=10人)、下痢23%(N=9人)、ALT(アラニン・アミノトランスフェラーゼ)上昇13%(N=5人)などであった。また、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)はAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーセ)上昇13%(N=5人)、ALT(アラニン・アミノトランスフェラーゼ)上昇13%(N=5人)であった。
また、15%(N=6人)の患者が免疫関連有害事象(irAE)を発症し、多発性筋炎(N=1人)、心筋炎(N=1人)をそれぞれ発症した時期はキイトルーダ投与2サイクル後であった。そして、免疫関連有害事象(irAE)のために4人の患者が入院を必要としたが、死亡した患者は確認されなかった。なお、治療中止になった主な理由は病勢進行(PD)70%(N=28人)、患者希望8%(N=3人)であり、最大投与期間である2年間の治療を継続した患者は3人であった。
以上の第II相試験の結果よりGiuseppe Giaccone氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のある再発胸腺がん患者さんに対してキイトルーダ単剤療法は全奏効率(ORR)22.5%を示し、有望な治療選択肢になり得ることが証明されました。しかし、胸腺がんは他の腫瘍よりも重度の自己免疫疾患を頻繁に発症するため、十分なモニタリングが必要になります。”