2018年2月15日、医学誌『JAMA Oncology』にてRAS遺伝子野生型BRAF遺伝子野生型転移性大腸がん患者に対する一次治療としてのmFOLFOXIRI+セツキシマブ(商品名アービタックス;以下アービタックス)併用療法後、メンテナンス療法としてのアービタックス単剤療法またはベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)単剤療法の有効性を検証した第II相のMACBETH試験(NCT02295930)の結果がAzienda Ospedaliera–Universitaria Pisana・Chiara Cremolini氏らにより公表された。
MACBETH試験とは、RAS遺伝子野生型BRAF遺伝子野生型転移性大腸がん患者(N=116人)に対する一次治療として14日間を1サイクルとするアービタックス500mg/m2+mFOLFOXIRI(イリノテカン130mg/m2/60分+オキサリプラチン85mg/m2/120分+L-ロイコボリン200 mg/m2/120分+5-FU2400mg/48時間)併用療法を最大で8サイクル投与し、奏効率が病勢安定(SD)または部分奏効(PR)または完全奏効(CR)状態を達成した場合にメンテナンス療法として14日間を1サイクルとするアービタックス500mg/m2単剤療法を投与する群(アームA,N=74人)、アバスチン5mg/kg単剤療法を投与する群(アームB,N=69人)に無作為に振り分け、主要評価項目として10ヶ月無増悪生存率(PFR)70%、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)などを比較検証した多施設共同オープンラベルの第II相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値59.5歳(アームA群61歳/アームB群59歳)、男性比率71%(68%/74%)。腫瘍部位右側18%(24%/12%)、左側56%(51%/62%)、直腸26%(25%/26%)。転移個数1個53%(56%/51%)、1個以上47%(44%/49%)、肝転移のみ45%(47%/42%)。
上記背景を有する患者に対する本試験フォローアップ期間中央値44.0ヶ月(30.5-52.1)時点における結果、主要評価項目である10ヶ月無増悪生存率(PFR)はアームA群50.8%(90%信頼区間:39.5%-62.2%)、アームB群40.4%(90%信頼区間:29.4%-52.1%)、両群共に主要評価項目を達成できなかった。
副次評価項目である92.2%の患者でイベントが発生した時点の無増悪生存期間(PFS)中央値はアームA群10.1ヶ月(95%信頼区間:7.2-12.8ヶ月)、アームB群9.3ヶ月(95%信頼区間:7.1-10.8ヶ月)を示した(ハザードリスク比:0.83; 95%信頼区間:0.57-1.21)。
また、アームA群より28人、アームB群より17人、両群で計45人の患者が第二次手術が実施され、アームA群より21人、アームB群より12人、両群で33人の患者がR0切除を達成した。なお、本試験に登録された患者の内肝転移のみを有する患者52人におけるR0切除はアームA群より17人、アームB群より10人、両群で計27人の患者で達成した。
一方の安全性として、一次治療中に3%以上の患者で発現が確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は以下の通りである。吐き気(アームA群3%/アームB群2%)、下痢(20%/16%)、口内炎(7%/5%)、好中球減少症(29%/33%)、発熱性好中球減少症(3%/2%)、神経毒性(7%/0%)、皮膚毒性(19%/12%)、無力症(10%/9%)、食欲不振(5%/2%)、静脈血栓塞栓症(2%/3%)。なおメンテナンス療法中に3%以上の患者で発現が確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は皮膚毒性、手足症候群、高血圧であり、皮膚毒性のみがアームA群で有意に発現率が高かった(20%/3%; P = .03)。
以上のMACBETH試験の結果よりChiara Cremolini氏らは以下のように結論を述べている。”アームAもアームBも、両群ともに主要評価項目である10ヶ月無増悪生存率(PFR)を達成できませんでした。しかしながら、RAS遺伝子野生型BRAF遺伝子野生型転移性大腸がん患者に対する一次治療としてのmFOLFOXIRI+アービタックス併用療法を投与することで切除率が向上し、かつ忍容性のある治療レジメンであることが示されました。”