2018年1月18日より20日までアメリカ合衆国・カルフォルニア州・サンフランシスコで開催されている消化器癌シンポジウム(ASCO-GI2018)のポスターセッションにて、ステージIII期大腸がん患者に対する術後化学療法としてのFOLFOX療法のここ10年間の治療成績を検証した解析結果がLevine Cancer Institute・Mohamed E. Salem氏らにより公表された。
本解析は、MOSAIC試験、C07試験、C08試験、N0147試験、AVANT試験、PETACC8試験の臨床試験においてフルオロウラシルベースの術後補助療法が実施されたアメリカ合衆国、欧州、オーストラリア、カナダのステージII/III期大腸がん患者のデータベースであるACCENT(Adjuvants Colon Cancer End Points)に基づき、ステージIII期大腸がん患者(N=7230人)に対する術後化学療法としてのFOLFOX療法の1998-2003年時点における無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)、再発後生存期間(SAR)と2004-2009年時点における結果を比較検証している。
無病生存期間(DFS)の解析方法としてはカプラン=マイヤー法、年次間の比較する解析方法としてはCoxモデル解析の手法を用いており、両群間における交絡効果を防ぐために年齢、性別、パフォーマンスステータス(PS)、T/N分類、腫瘍部位、組織学的分類などの患者背景を調整している。
なお、1998-2003年時点と2004-2009年時点に二分した背景としては、2004年に米国食品医薬品局(FDA)より再発難治性大腸がんの効能でベバシズマブ(商品名アバスチン)が承認された年次であるためである。
本試験の結果、1998-2003年時点における術後化学療法としてのFOLFOX療法の3年無病生存率(DFS)72.3%であるのに対して2004-2009年時点は74.7%、2004-2009年時点における術後化学療法としてのFOLFOX療法で無病生存のリスクが9% (ハザード比:0.91,P=0.097)減少するも、年次間における違いは確認されなかった。
一方で、1998-2003年時点における術後化学療法としてのFOLFOX療法の5年全生存率(OS)75.7%であるのに対して2004-2009年時点は80.2%、2004-2009年時点における術後化学療法としてのFOLFOX療法で死亡のリスク17%(ハザード比:0.83,P=0.004)統計学的有意に減少し、年次間における違いが確認された。
また、1998-2003年時点における術後化学療法としてのFOLFOX療法の再発後生存期間(SAR)中央値14.8ヶ月であるのに対して2004-2009年時点は26.4ヶ月、約2倍の再発後生存期間が統計学的有意に延長し(ハザード比:0.61,P<0.001)、年次間における違いが確認された。
以上の解析結果より、Mohamed E. Salem氏らは以下のように結論を述べている"術後化学療法としてのFOLFOX療法による治療を受けたステージIII期大腸がん患者のここ10年間における全生存期間(OS)、再発後生存期間(SAR)は改善したが、無病生存期間(DFS)は改善しなかった。しかし、本試験の結果より術後化学療法の治療成績は良好であることが示されたことからも、最近5年間で実施されている術後化学療法についても再評価するべきでしょう。"