2018年1月18日より20日までアメリカ合衆国・カルフォルニア州・サンフランシスコで開催されている消化器癌シンポジウム(ASCO-GI2018)のポスターセッションにて、RAS遺伝子変異型転移性大腸がん日本人患者に対するベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)+FOLFOXIRI併用療法の有効性を検証した第II相のJACCRO CC-11試験(UMIN000015152)の結果が聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学・砂川優氏らにより公表された。
JACCRO CC-11試験とは、RAS遺伝子変異型転移性大腸がん日本人患者(N=62人)に対して2週間を1サイクルとしてアバスチン5m/kg+FOLFOXIRI(イリノテカン150 mg/m², オキサリプラチン85 mg/m², ロイコボリン200 mg/m², フルオロウラシル2400 mg/m²)併用療法を最大12コース投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、早期腫瘍縮小率(ETS)、最大腫瘍縮小率(DoR)、安全性などを検証した第II相の試験である。なお、本試験では血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を治療開始前、治療開始8週間時点、病勢進行時点の3つのタイミングで採取しており、KRAS遺伝子、NRAS遺伝子、BRAF遺伝子、PIK3CA遺伝子のステータス状態を測定している。
本試験のフォローアップ期間中央値10.2ヶ月時点における結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は75.8%を示し、病勢コントロール率は96.8%を示した。また、副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は11.5ヶ月(95%信頼区間:9.5-14.0)、早期腫瘍縮小率(ETS)は73.8%、最大腫瘍縮小率(DoR)は49.6%をそれぞれ示した。
また、治療開始前時点にRAS遺伝子変異を示した41人の患者における治療開始後8週時点のRAS遺伝子変異は、臨床結果を予測するための指標になり得る可能性を示唆した。治療開始後8週時点にRAS遺伝子変異でない患者(N=31人)の客観的奏効率(ORR)81%、無増悪生存期間(PFS)中央値11.9ヶ月、早期腫瘍縮小率(ETS)77%、最大腫瘍縮小率(DoR)54.5%に対して、治療開始後8週時点にRAS遺伝子変異である患者(N=10人)の客観的奏効率(ORR)50%、無増悪生存期間(PFS)中央値8.8ヶ月、早期腫瘍縮小率(ETS)60%、最大腫瘍縮小率(DoR)33.5%を示した。
他にも、RAS遺伝子変異のない早期腫瘍縮小(ETS)を達成した患者(N=24人)、その他(N=17人)の患者郡における客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、最大腫瘍縮小率(DoR)を検証しており、その結果は下記の通りである。RAS遺伝子変異のない早期腫瘍縮小(ETS)を達成した患者の客観的奏効率(ORR)96%、無増悪生存期間(PFS)中央値12.4ヶ月、最大腫瘍縮小率(DoR)55.0%に対して、その他(N=17人)の患者の客観的奏効率(ORR)41%、無増悪生存期間(PFS)中央値8.7ヶ月、最大腫瘍縮小率(DoR)33.5%を示した。
以上のJACCRO CC-11試験の結果より、砂川優氏らは以下のように述べている。”RAS遺伝子変異型転移性大腸がん日本人患者さんに対するアバスチン+FOLFOXIRI併用療法は治療効果の高いレジメンです。また、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)と早期腫瘍縮小(ETS)は治療中の効果判定を予測するバイオマーカーになり得る可能性が示唆されました。”