2018年2月10日、医学誌『The Lancet Oncology』にて前治療歴のない進行性腎細胞がん患者に対する血管内皮増殖因子(VEGF)受容体阻害薬であるアキシチニブ(商品名インライタ;以下インライタ)+抗PD-1抗体薬であるペムブロリスマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)併用療法の有効性、安全性を検証した第Ib相試験(NCT02133742)の結果がGeorgetown-Lombardi Comprehensive Cancer Center・Michael B Atkins氏らにより公表された。
本試験は、未治療の進行性腎細胞がん患者(N=52人)に対して3週を1サイクルとして1日2回インライタ3mgまたは5mg+キイトルーダ2mg/kg併用療法を投与し、主要評価項目である2サイクル(6週間)時点における容量制限毒性(DLT)、 第II相試験推奨用量を決定するための最大耐性量(MTD)を検証したオープンラベルの第Ib相である。なお、52人の内最初に登録された11人は用量設定段階、残りの41人は用量漸増段階より試験に参加している。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値63.0歳(57.0-67.5)、男性79%(N=41人)、白人87%(N=45人)、ECOG-Performance Status(PS)0が75%(N=39人)、1が19%(N=10人)、IMDC分類低リスク46%(N=24人)、中リスク44%(N=23人)、高リスク6%(N=3人)。
上記背景を有する患者に対してインライタ+キイトルーダ併用療法を投与した結果は下記の通りである。用量設定段階に登録された患者11人における主要評価項目である2サイクル(6週間)時点における容量制限毒性(DLT)は1人の患者が一過性脳虚血発作(TIA)、2人の患者がインライタによる治療関連有害事象(TRAE)である頭痛、疲労、脱水、無力症のために投与計画した用量の75%を達成できなかった。以上の結果より、 第II相試験推奨用量を決定するための最大耐性量(MTD)はインライタは1日2回5mg、キイトルーダは3週に1回2mg/kgに決定された。
治療関連有害事象(TRAE)としては、グレード3または4の有害事象(TRAE)は65%(N=34人)の患者で発症し、その内訳は下記の通りである。高血圧23%(N=12人)、下痢10%(N=5人)、疲労10%(N=5人)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)上昇8%(N=4人)。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は1人もいなかった。
また、自己免疫疾患関連副作用(irAE)の内訳は下記の通りである。下痢29%(N=15人)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)上昇17%(N=9人)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)上昇13%(N=7人)、甲状腺機能低下症13%(N=7人)、疲労12%(N=6人)。
一方の有効性としては、フォローアップ期間中央値20.4ヶ月時点における客観的奏効率(ORR)は下記の通りである。完全奏効(CR)8%(N=4人)、部分奏効(PR)65%(N=34人)を含む客観的奏効率(ORR)は73%(95%信頼区間:59.0-84.4%,N=38人)を示した。腫瘍縮小効果は90%以上(N=48人)の患者で確認され、IMDC分類別におけるその内訳は低リスクの患者75%(N=18/24人)、中リスクの患者69%(N=18/26人)を示した。なお、無増悪生存期間(PFS)中央値は20.9ヶ月(95%信頼区間:15.4-未到達)、全生存期間(OS)中央値は未到達(19.1-21.7ヶ月)であった。
以上の第Ib相試験の結果よりMichael B Atkins氏らは以下のように述べている。”未治療の進行性腎細胞がん患者さんに対するインライタ+キイトルーダ併用療法は忍容性があり、腫瘍縮小効果はかなり期待ができます。血管内皮増殖因子(VEGF)受容体阻害薬と抗PD-1抗体薬の相乗効果については第III相試験で検証することで証明する必要があります。”