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食道扁平上皮がん オプジーボ第2相試験でRECIST奏効率17%、免疫学的評価基準(irRC)では奏効率25% Lancet Oncol

標準療法に不応、または不耐容の日本人の食道扁平上皮がん患者を対象とする免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)の第2相単群非盲検試験JapicCTI-142422)の中間解析で、免疫学的評価基準(irRC)による奏効率(25%)は固形がん治療効果判定基準(RSCIST)による奏効率(17%)を上回り、irRCを用いた判定は、病勢コントロール率DCR)や無増悪生存(PFS)期間中央値も含めRECIST判定より一貫して良好な成績になることがわかった。大阪大学の工藤 敏啓氏らが2017年3月14日のLancet Oncol Onlineに発表した。

目次

1次治療に対して不応・不耐の食道扁平上皮がん対象にオプジーボを使用

2014年2月25日から11月14日、フルオロウラシルなどフッ化ピリミジン系、シスプラチンパクリタキセルなどプラチナ系、もしくはドセタキセルなどタキサン系の標準療法に不応(反応しない)または不耐(耐容性がない)の食道扁平上皮がん患者65人を登録し、オプジーボ3mg/kgを2週ごとに静注した。

その結果、安全性解析対象は全65人、有効性解析対象は複数の原発がんを有する1人を除く64人で、追跡期間中央値は10.8カ月、投与期間中央値は3サイクルであった。

主要評価項目である固形がん治療効果判定基準(RECIST)による奏効率は17%(11/64人)で、完全奏効(CR)が1人、部分奏効(PR)が10人に得られた。病勢安定SD)は16人に認められ、CRとPR、およびSDを合わせた病勢コントロール率(DCR)は42%(27/64人)であった。無増悪生存(PFS)期間中央値1.5カ月であった。奏効例11人で、奏効到達期間中央値は1.5カ月 奏効持続期間中央値はカットオフまでに特定に至らず、2.6カ月から11.6カ月であった。29人(45%)は腫瘍縮小が確認された。

免疫学的評価基準(irRC)による免疫関連奏効率は25%(16/64人)で、SDを合わせた免疫関連病勢コントロール率(DCR)は67%(43/64人)、免疫関連の無増悪生存期間(PFS)中央値は2.9カ月であった。

治療関連有害事象を理由とする死亡例はなかった。グレード3以上の治療関連有害事象は11/65人(17%)に発現し、グレード4は呼吸困難(1人)と低ナトリウム血症(1人)、グレード3は食欲減退(2人)、肺感染症(2人)、血中クレアチニンホスホキナーゼ上昇(2人)、脱水(2人)、疲労(1人)、肝機能異常(1人)、間質性肺疾患(1人)、および好中球数減少(1人)であった。これらのうち、肺感染症(2人)と脱水(2人)、間質性肺疾患(1人)、疲労(1人)、および肝機能異常(1人)は治療に関連する重篤な有害事象とされた。

以上、標準療法に不応、または不耐容の食道扁平上皮がん患者に対するオプジーボの有用性が示唆された。プログラム細胞死受容体(PD-1)に結合して抗腫瘍免疫を回復させるオプジーボは、腫瘍量を持続的に減少する効果を示し、既に承認されている悪性黒色腫や非小細胞肺がんなどを対象とした場合と同様の効果が得られると考えられた。

がん免疫療法に対応する効果判定基準の必要性

免疫チェックポイント阻害薬は、細胞障害活性を介してがんを攻撃する従来の化学療法とは異なり、腫瘍に対する自然免疫を介して効果を発揮するため、効果発現が遅れる場合がある。しかもその際、治療当初は腫瘍量が増加したり、病勢安定が持続した後に新病変が出現する可能性もある。

従来から汎用されている固形がん治療効果判定基準(RECIST)、あるいは世界保健機関(WHO)の判定基準は、病勢進行(PD)と判定された後の状態、ないし治療効果を検証する必要がないため、免疫療法に対する治療反応を特定するには十分とはいえない。一方、免疫学的評価基準(irRC)では遅発性の効果などを考慮し、事後的な検証が必要で、判定の最終確認は初回評価から少なくとも4週間以上の間隔をあけることが推奨されている。また、新病変はPDとせず、新病変を腫瘍総量に含めて判定する。免疫チェックポイントのPD-1、またはPD-L1の阻害薬に対する免疫学的反応パターンを評価した場合、全生存期間はRECIST判定による同期間より延長することが示されている。

例えば、オプジーボと同様、PD-1を標的とするモノクローナル抗体ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)で治療した悪性黒色腫患者592人のうち、治療開始後12週以上生存していた84人(14%)はRECIST判定で病勢進行(PD)とされたが、免疫学的評価基準(irRCではPDが否定された。これは非定型的反応と呼ばれ、RECIST判定ではキイトルーダの有益性が過小評価されてしまう患者が一定数存在したことになる。そして、病勢進行(PD)の判定のみで治療終了を判断するのではなく、非標的病変として出現した新病変を評価することに目を向ければ、治療を早期に終了してしまうことを防げるのではないかと指摘されている(2016年5月J Clin Oncol誌34巻13号1510ページ)。

本試験でも奏効率、病勢コントロール率(DCR)、および無増悪生存(PFS)期間はRECIST vs irRCの判定別で一貫してirRCの方が好成績を示した。irRCは十分に確立された判定基準ではないが、がん治療の領域に複数の免疫チェックポイント阻害薬が登場した現状に合わせ、より適切な判定基準の確立に向けた議論が必要である。

Nivolumab treatment for oesophageal squamous-cell carcinoma: an open-label, multicentre, phase 2 trial(Lancet Oncol. 2017 Mar 14.)

記事:川又 総江

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