・非小細胞肺がんの治療方針を決める因子として様々な遺伝子変異の存在があり、その遺伝子変異を特定するために次世代シーケンサー(NGS)などの遺伝子検査は必要である
・本試験で用いられた次世代シーケンサーは、非小細胞肺がんの治療に関わる8種類の遺伝子であるEGFR、ALK、 ROS1、 BRAF、MET、HER2、RET、NTRK1を一度に測定できる
・次世代シーケンサーの総費用はその他単一遺伝子シーケンサーであるシーケンス検査よりも1,530,869ドル、KRAS遺伝子検査よりも1,393,678ドル、遺伝子パネル検査よりも2,140,795ドルのコスト削減効果がある
2018年5月16日、2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催される米国癌治療学会議(ASCO 2018)に先立って行われた報道解禁プレスキャストにて、進行性非小細胞肺がん患者に対する次世代シーケンサー(NGS)と単一遺伝子シーケンサーの費用対効果を比較検証した試験の結果がCleveland Clinic・Nathan A. Pennell氏らにより公表された。
本試験は、The Centers for Medicare & Medicaid Services(CMS)のメディケアである新規進行性非小細胞肺がん患者(N=2066人)を対象に下記の次世代シーケンサー(NGS)、またはそれ以外の単一遺伝子シーケンサーに要する生検、検査などの費用(※100万人規模の健康保険プランを仮定しコストを算出)を検証した試験である。
・次世代シーケンサー:非小細胞肺がんの治療に関わる8種類の遺伝子であるEGFR、ALK、 ROS1、 BRAF、MET、HER2、RET、NTRK1を一度に測定する検査
・シーケンス検査:一度に1種類の遺伝子を測定する検査
・KRAS遺伝子検査:KRAS遺伝子変異を除外するための検査 ※なお、もしKRAS遺伝子変異が陽性である場合、BRAF遺伝子変異をはじめその他遺伝子変異とKRAS遺伝子変異は相互排他的であるためKRAS遺伝子検査以外の検査を実施しない
・遺伝子パネル検査:EGFR、ALK、ROS1、BRAFの遺伝子を一度に測定する検査
上記4種類の遺伝子検査におけるメディケア(N=2066人)の総費用は下記の通りである。次世代シーケンサーの総費用2,190,499ドル(約242,773,004円※)に対してシーケンス検査は3,721,368ドル(約412,439,215円※)、KRAS遺伝子検査は3,584,177ドル(約397,234,337円)、遺伝子パネル検査は4,331,295ドル(約480,037,425円※)であった。そして、次世代シーケンサーの総費用はシーケンス検査よりも1,530,869ドル(約169,666,211円※)、KRAS遺伝子検査よりも1,393,678ドル(約154,458,008円※)、遺伝子パネル検査よりも2,140,795ドル(約237,264,310円※)のコスト削減効果があると算出された。
※2018年5月18日のレート(1ドル110.83円)による換算
また、遺伝子検査の結果が得られるまでの期間は次世代シーケンサーが2週間であるのに対して、シーケンス検査は2.8週間、KRAS遺伝子検査は2.7週間、遺伝子パネル検査は2週間であり、次世代シーケンサーはシーケンス検査、KRAS遺伝子検査よりも短期間で検査結果が得られることを示した。
以上の分析結果を受けてNathan A. Pennell氏らは以下のように結論を述べている。”今日、肺がんの治療方針の決定因子として様々な遺伝子変異の存在があります。また、近い将来新たな遺伝子変異の存在が特定されることでしょう。そのため、次世代シーケンサーのように一度の検査で複数の遺伝子変異が特定できる遺伝子検査は、肺がんをはじめとしたがん治療の費用対効果を高めるでしょう。”