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術前化学放射線療法+手術後に病理学的完全奏功(pCR)を達成した直腸がん患者に対する術後化学療法は全生存期間(OS)を延長する

この記事の3つのポイント
・術前化学放射線療法+手術後に病理学的完全奏功(pCR)を示した直腸がん患者に対する術後化学療法はガイドラインでも推奨されているが、その科学的根拠は十分ではない
・1年全生存率(OS rate)、3年全生存率(OS rate)、5年全生存率(OS rate)は術後化学療法群でそれぞれ99.7%、97.1%、94.7%に対して術後観察群99.2%、93.6%、88.4%(P=0.005)であったた
・本試験のサブグループ解析の結果、術後化学療法による臨床的ベネフィットを特に受ける患者は臨床病期がcT3/T4、N+の患者である

2018年4月19日、医学誌『JAMA Oncology』にて術前化学放射線療法+手術後に病理学的完全奏功(pCR)を達成した直腸がん患者に対して術後化学療法の全生存期間(OS)の延長効果を検証した試験の結果がUniversity of Texas Southwestern Medical Center・Patricio M. Polanco氏らにより公表された。

本試験は、2006年より2012年時点にNational Cancer Database(NCDB)に登録されていた術前化学放射線療法+手術後に病理学的完全奏功(pCR)を達成したステージIIまたはIII直腸がん患者(N=1482人)を対象に術後化学療法を実施した群(N=741人)、または術後観察をした群(N=741人)に分けて主要評価項目である全生存期間(OS)を比較検証した試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢は術後化学療法群で18歳から49歳25%(N=18人)、50歳から59歳32%(N=238人)、60歳から69歳28%(N=204人)、70歳以上15%(N=114人)、術後観察群で18歳から49歳24%(N=178人)、50歳から59歳31%(N=232人)、60歳から69歳29%(N=215人)、70歳以上16%(N=116人)。

性別は術後化学療法群で男性58%(N=430人)、女性42%(N=311人)、術後観察群で男性58%(N=429人)、女性42%(N=312人)。人種は術後化学療法群で白人85%(N=617人)、その他15%(N=111人)、術後観察群で白人84%(N=615人)、その他16%(N=119人)。チャールソン併存疾患指数(CCI)は術後化学療法群でスコア0が82%(N=610人)、スコア1が15%(N=109人)、スコア2以上が3%(N=22人)、術後観察群でスコア0が82%(N=607人)、スコア1が15%(N=113人)、スコア2以上が3%(N=21人)。

臨床病期は術後化学療法群でcT1/T2/N+が8%(N=60人)、cT3/T4/N+が45%(N=332人)、cT3/T4/N-が47%(N=349人)、術後観察群でcT1/T2/N+が8%(N=60人)、cT3/T4/N+が45%(N=332人)、cT3/T4/N-が47%(N=349人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目であるフォローアップ期間中央値39ヶ月(26-55ヶ月)時点における全生存期間(OS)は術後観察群よりも術後化学療法群で死亡のリスクが50%減少した(ハザードリスク0.50,95%信頼区間:0.32-0.79,P=0,005)。また、1年全生存率(OS rate)、3年全生存率(OS rate)、5年全生存率(OS rate)は術後化学療法群で99.7%、97.1%、94.7%に対して術後観察群で99.2%、93.6%、88.4%(P=0.005)を示した。

なおサブグループ解析の結果、臨床病期がcT3/T4(ハザードリスク0.48,95%信頼区間:0.30-0.77)、N+(ハザードリスク0.53,95%信頼区間:0.28-0.97)の背景を有する患者では術後化学療法による臨床的ベネフィットが高いことが示された。

以上の試験結果よりPatricio M. Polanco氏らは下記のように結論を述べている。”術前化学放射線療法+手術後に病理学的完全奏功(pCR)を達成したステージIIまたはIII直腸がん患者に対する術後化学療法は術後観察よりも全生存期間(OS)を改善することを示しました。”

Association of Adjuvant Chemotherapy With Overall Survival in Patients With Rectal Cancer and Pathologic Complete Response Following Neoadjuvant Chemotherapy and Resection(JAMA Oncol. Published online April 19, 2018. doi:10.1001/jamaoncol.2018.0231)

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