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医療大麻を使用する頭頸部がん患者は未使用の患者よりもQOL(生活の質)は良好、心理的苦痛の程度は軽度である

この記事の3つのポイント
・頭頚部がん患者を対象に医療大麻による心理的苦痛の軽減効果を検証した前向き試験
・医療大麻使用群と未使用群にわかれ、QOL生活の質)と症状について評価した
・医療大麻の使用は患者の心理的苦痛の軽減、QOL(生活の質)の向上の可能性がある

2018年8月2日、医学誌『JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery』にて新規頭頸部がん患者に対する医療大麻であるカンナビスサティバ(Cannabis Sativa)のQOL(生活の質)、心理的苦痛の軽減効果について検証した前向きコーホート試験の結果がMcMaster University・Han Zhang氏らにより公表された。

本試験は、新規に頭頸部がんと診断された患者(N=148人)を医療大麻であるカンナビスサティバを使用する患者群(N=74人)、医療大麻を使用しない患者群(N=74人)の2群に振り分け、主要評価項目としてEQ-5D(EuroQol-5D )、エドモントン症状評価システム(Edmonton Symptom Assessment System)による生活の質(OQL)、心理的苦痛の軽減効果について比較検証した前向きコーホート試験である。

なおEQ-5Dとは、移動の程度、身の回りの管理、ふだんの活動(仕事、勉強、家族・余暇活動など)、痛み/不快感、不安/ふさぎ込みの5つの項目より健康関連QOL(生活の質)をアセスメントする評価票であり、QOL(生活の質)を1(問題ない)、2(いくらか問題である)、3(できない)までの段階で評価している。

またエドモントン症状評価システムとは、緩和医療の対象となる患者が頻繁に経験する痛み、吐き気、だるさ、気分の落ち込み、不安、食欲不振、眠気、全体的な調子の8つの症状をアセスメントをする評価票であり、症状の強度を 0(症状がない)から 10(症状がもっともひどい)までの段階で評価している。

本試験に登録された医療大麻使用群、未使用群それぞれの患者背景は下記の通りである。年齢中央値は医療大麻使用群62.3歳に対して未使用群62.2歳。性別は男性82%(N=61人)に対して85%(N=63人)、女性18%(N=13人)に対して15%(N=11人)。Karnofsky Performance Statusは92.4に対して90.8。職業ステータスはフルタイム34%(N=25人)に対して35%(N=26人)、パートタイム1%(N=1人)に対して1%(N=1人)、リタイア47%(N=35人)に対して46%(N=34人)。

原発腫瘍部位は中咽頭64%(N=47人)に対して64%(N=47人)、口腔19%(N=14人)に対して19%(N=14人)、下咽頭1%(N=1人)に対して1%(N=1人)、喉頭16%(N=12人)に対して16%(N=12人)。HPV関連ステータスはp16陽性96%(N=45人)に対して98%(N=46人)、p16陰性4%(N=2人)に対して2%(N=1人)。

TNM分類T因子はT1が16%(N=12人)に対して15%(N=11人)、T2が32%(N=24人)に対して32%(N=24人)、T3が38%(N=28人)に対して37%(N=27人)、T4が10%(N=7人)に対して11%(N=8人)。N因子はN0が8%(N=6人)に対して10%(N=7人)、N1が45%(N=33人)に対して43%(N=32人)、N2aが27%(N=20人)に対して26%(N=19人)、N2bが8%(N=6人)に対して10%(N=7人)、N2cが4%(N=3人)に対して5%(N=4人)、N3が5%(N=4人)に対して4%(N=3人)。

治療内容は放射線療法24%(N=18人)に対して23%(N=17人)、化学放射線療法39%(N=29人)に対して41%(N=30人)、手術11%(N=8人)に対して10%(N=7人)、手術+放射線療法15%(N=11人)に対して16%(N=12人)、手術+化学放射線療法11%(N=8人)に対して11%(N=8人)。以上のように両群間における年齢、性別、原発腫瘍部位、HPV関連ステータス、TNM分類など患者背景に統計学有意な差は確認されなかった。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。EQ-5D評価の結果、移動の程度は医療大麻使用群1.22に対して未使用群1.26(差0.04)、身の回りの管理は1.11に対して1.12(差0.01)、ふだんの活動(仕事、勉強、家族・余暇活動など)は1.31に対して1.36(差0.05)、痛み/不快感は1.34に対して2.08(差0.74)、不安/ふさぎ込みは1.53に対して1.82(差0.29)、5つの項目の内3つに該当する移動の程度、身の回りの管理、ふだんの活動(仕事、勉強、家族・余暇活動など)において両群間に統計学有意な差はなかったが、痛み/不快感、不安/ふさぎ込みの2つの項目においては医療大麻使用群で統計学有意に低かった。

またエドモントン症状評価システムの結果、痛みは医療大麻使用群1.85に対して未使用群2.72(差0.87)、吐き気は0.22に対して0.71(差0.49)、だるさは1.66に対して3.88(差2.22)、気分の落ち込みは0.72に対して3.19(差3.05)、不安は0.77に対して5.30(差4.53)、食欲不振は1.70に対して3.57(差1.87)、眠気は0.56に対して2.68(差2.12)、全体的な調子は4.05に対して2.12(差1.93)、8つの項目の内3つに該当する痛み、不安、気分の落ち込みの3つの項目においては医療大麻使用群で統計学有意に低く、全体的な調子の1つの項目においては医療大麻使用群で統計学有意に高かった。

以上の前向きコーホート試験の結果よりHan Zhang氏らは以下のように結論を述べている。”医療大麻であるカンナビスサティバ(Cannabis Sativa)を使用している新規頭頸部がん患者は未使用の患者よりもQOL(生活の質)を改善し、心理的苦痛の程度が軽度である可能性があります。”

Association of Marijuana Use With Psychosocial and Quality of Life Outcomes Among Patients With Head and Neck Cancer(JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. Published online August 2, 2018. doi:10.1001/jamaoto.2018.0486)

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