・複数治療歴のある非小細胞肺がん患者対象のアンロチニブの有効性を検証した第Ⅲ試験
・アンロチニブは中国が独自開発した分子標的薬
・プラセボ群と比較して統計学的有意に改善する点が見られた
2018年8月9日、医学誌『JAMA Oncology』にて3レジメン以上の治療歴のある進行性非小細胞肺がん患者に対する中国自主開発のマルチキナーゼ阻害薬である塩酸アンロチニブ(Anlotinib)カプセル単剤療法のプラセボに対する有効性を比較検証した第III相のALTER0303試験(NCT02388919)の結果がShanghai Chest Hospital・Baohui Han氏らにより公表された。
ALTER0303試験とは、3レジメン以上の治療歴のある進行性非小細胞肺がん患者(N=439人)に対して1日1回アンロチニブ120mg単剤療法を投与する群(N=296人)、またはプラセボ単剤療法を投与する群(N=143人)に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)などを比較検証した多施設共同二重盲検下の第III相試験である。
本試験に登録された患者背景はアンロチニブ群、プラセボ群それぞれ下記の通りである。年齢はアンロチニブ群で60歳以下52.0%(N=153人)、61-69歳42.5%(N=125人)、70歳以上5.4%(N=16人)に対してプラセボ群で60歳以下62.9%(N=90人)、61-69歳28.7%(N=41人)、70歳以上8.4%(N=12人)。性別はアンロチニブ群で男性64.0%(N=188人)、女性36.1%(N=106人)に対してプラセボ群で男性67.8%(N=97人)、女性32.2%(N=46人)。
ECOG Performance Statusはアンロチニブ群でスコア0が20.1%(N=59人)、スコア1が79.3%(N=223人)、スコア2が0.7%(N=2人)に対してプラセボ群でスコア0が15.4%(N=22人)、スコア1が83.9%(N=120人)、スコア2が0.7%(N=1人)。喫煙歴はアンロチニブ群であり48.6%(N=143人)、なし51.4%(N=151人)に対してプラセボ群であり53.8%(N=77人)、なし46.2%(N=66人)。
組織学的分類はアンロチニブ群で腺がん77.6%(N=228人)、扁平上皮がん18.0%(N=53人)に対してプラセボ群で腺がん75.5%(N=108人)、扁平上皮がん23.1%(N=33人)。臨床病期はアンロチニブ群でステージIIIBが5.1%(N=15人)、ステージIVが94.2%(N=277人)に対してプラセボ群でステージIIIBが4.9%(N=7人)、ステージIVが95.1%(N=136人)。
遺伝子変異ステータスはアンロチニブ群でEGFR遺伝子変異陽性31.6%(N=93人)、ALK融合遺伝子変異陽性1.7%(N=5人)に対してプラセボ群でEGFR遺伝子変異陽性31.5%(N=45人)、ALK融合遺伝子変異陽性1.4%(N=2人)。前治療歴はアンロチニブ群で分子標的治療薬歴あり46.3%(N=136人)、放射線治療歴あり40.1%(N=118人)、化学療法歴3レジメン以上41.8%(N=123人)に対してプラセボ群で分子標的治療薬歴あり51.7%(N=74人)、放射線治療歴あり45.5%(N=65人)、化学療法歴3レジメン以上45.5%(N=65人)。以上のように両群間における患者背景に大きな偏りは確認されなかった。
上記背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はアンロチニブ群9.6ヶ月(95%信頼区間:8.2-10.6ヶ月)に対してプラセボ群6.3ヶ月(95%信頼区間:5.0-8.1ヶ月)、アンロチニブ群で死亡(OS)のリスクを32%統計学有意に減少(HR:0.68,95%信頼区間:0.54-0.87,P=0.002)した。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はアンロチニブ群5.4ヶ月(95%信頼区間:4.4-5.6ヶ月)に対してプラセボ群1.4ヶ月(95%信頼区間:1.1-1.5ヶ月)、アンロチニブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを75%統計学有意に減少(HR:0.25,95%信頼区間:0.19-0.31,P<0.001)した。
また、患者背景別のサブグループ解析の全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)の結果は下記の通りである。EGFR遺伝子変異陽性群ではアンロチニブにより死亡(OS)のリスクが41%減少(HR:0.59,95%信頼区間:0.37-0.93)、病勢進行または死亡(PFS)のリスクが85%減少(HR:0.15,95%信頼区間:0.09-0.24)。EGFR遺伝子変異陰性群ではアンロチニブにより死亡(OS)のリスクが27%減少(HR:0.73,95%信頼区間:0.55-0.97)、病勢進行または死亡(PFS)のリスクが71%減少(HR:0.29,95%信頼区間:0.22-0.39)。
腺がん群ではアンロチニブにより死亡(OS)のリスクが33%減少(HR:0.67,95%信頼区間:0.51-0.89)、病勢進行または死亡(PFS)のリスクが79%減少(HR:0.21,95%信頼区間:0.15-0.28)。一方、扁平上皮がん群では病勢進行または死亡(PFS)のリスクが63%減少(HR:0.37,95%信頼区間:0.22-0.60)し、死亡(OS)のリスクは改善しなかった。
その他副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はアンロチニブ群9.2%に対してプラセボ群0.7%、アンロチニブ群で奏効率は統計学有意に高率(P<0.001)であった。また、病勢コントロール率(DCR)はアンロチニブ群81.0%に対してプラセボ群37.1%、アンロチニブ群で病勢コントロール率は統計学有意に高率(P<0.001)であった。
一方の安全性として、プラセボ群に比べてアンロチニブ群で統計学有意に多くの発現が確認された治療関連有害事象(TRAE)は高血圧、疲労、甲状腺刺激ホルモン上昇、食欲不振、高トリグリセリド血症、手足症候群、高コレステロール血症であった。なお、アンロチニブ群においてグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は61.9%(N=182人)で、その主な有害事象(AE)は高血圧13.6%(N=40人)、低ナトリウム血症8.2%(N=24人)、そしてγ-グルタミルトランスフェラーゼ上昇5.4%(N=16人)であった。
以上のALTER0303試験の結果よりBaohui Han氏らは以下のように結論を述べている。”3レジメン以上の治療歴のある進行性非小細胞肺がん患者に対するマルチキナーゼ阻害薬であるアンロチニブはプラセボに比べて全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)をともに統計学有意に改善しました。”