・固形がんの患者を対象にオプジーボとオプジーボ+ヤーボイの有効性を検証した
・対象の患者のうち、既治療の胃がん、食道がん、胃食道接合部がんの患者の結果である
・単剤、併用いずれの療法も有効性を示した
2018年8月15日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて治療歴のある局所進行性転移性胃がん、食道がん、または胃食道接合部がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)単剤療法、オプジーボ+抗CTLA-4抗体薬であるイピリムマブ(商品名ヤーボイ;以下ヤーボイ)併用療法の有効性を検証した第I/II相のCheckMate-032試験(NCT01928394)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Yelena Y. Janjigian氏らにより公表された。
CheckMate-032試験とは、胃がん、食道がん、または胃食道接合部がん患者(N=160人)を含む進行性固形がん患者に対して2週に1回オプジーボ3mg/kg単剤療法を投与する群(N=59人)、または3週に1回オプジーボ1mg/kg+ヤーボイ3mg/kg併用療法を投与する群(N=49人)、または3週に1回オプジーボ3mg/kg+ヤーボイ1mg/kg併用療法を投与する群(N=52人)に分けて、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性などを検証した第I/II相試験である。
なお、本結果はCheckMate-032試験に登録された固形がん患者の内、局所進行性転移性胃がん、食道がん、または胃食道接合部がん患者における結果である。また、オプジーボ+ヤーボイ併用療法は4サイクル投与後、2週に1回オプジーボ3mg/kg単剤療法を投与している。
本試験に登録された3群それぞれの患者背景は下記の通りである。年齢中央値は単剤療法群60歳(29-80歳)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群53歳(27-77歳)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群58歳(19-81歳)。ECOG Performance Statusは単剤療法群でスコア0が49%(N=29人、スコア1が51%(N=30人)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群でスコア0が55%(N=27人)、スコア1が45%(N=22人)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群でスコア0が35%(N=18人)、スコア1が65%(N=34人)。
腫瘍部位は単剤療法群で胃32%(N=19人)、食道15%(N=9人)、胃食道接合部53%(N=31人)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群で胃45%(N=22人)、食道16%(N=8人)、胃食道接合部39%(N=19人)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群で胃35%(N=18人)、食道17%(N=9人)、胃食道接合部48%(N=25人)。
前治療歴は単剤療法群で0レジメンが0%、1レジメンが17%(N=10人)、2レジメンが34%(N=20人)、3レジメンが32%(N=19人)、4レジメン以上が17%(N=10人)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群で0レジメンが2%(N=1人)、1レジメンが12%(N=6人)、2レジメンが39%(N=19人)、3レジメンが22%(N=11人)、4レジメン以上が24%(N=12人)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群で0レジメンが0%、1レジメンが31%(N=16人)、2レジメンが31%(N=16人)、3レジメンが25%(N=13人)、4レジメン以上が13%(N=7人)。
遺伝子等ステータスは単剤療法群でマイクロサテライト不安定性(MSI-H)患者が28%(N=7人)、PD-L1発現陽性(≧1)患者が38%(N=16人)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群でマイクロサテライト不安定性(MSI-H)患者が9%(N=2人)、PD-L1発現陽性(≧1)患者が24%(N=10人)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群でマイクロサテライト不安定性(MSI-H)患者が8%(N=2人)、PD-L1発現陽性(≧1)患者が30%(N=13人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は単剤療法群12%(95%信頼区間:5%-23%)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群24%(95%信頼区間:13% -39%)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群8%(95%信頼区間:2%-19%)。なお、客観的奏効率(ORR)はマイクロサテライト不安定性、PD-L1発現陽性の有無に関係なく確認されている。
また、病勢コントロール率(DCR)は単剤療法群32%(N=19人)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群41%(N=20人)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群37%(N=19人)。奏効持続期間(DOR)中央値は単剤療法群7.1ヶ月(95%信頼区間:3.0-13.2ヶ月)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群7.9ヶ月(95%信頼区間:2.8ヶ月-未到達)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群未到達(95%信頼区間:2.5ヶ月-未到達)。
副次評価項目である12ヶ月全生存率(OS rate)は単剤療法群39%(95%信頼区間:26%-52%)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群35%(95%信頼区間:22%-49%)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群24%(95%信頼区間:13%-37%)。12ヶ月無増悪生存率(PFS rate)は単剤療法群8%(95%信頼区間:3%-17%)、ヤーボイ3mg/kg併用療法群17%(95%信頼区間:8%-29%)、ヤーボイ1mg/kg併用療法群10%(95%信頼区間:3%-20%)。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は単剤療法群69%、ヤーボイ3mg/kg併用療法群84%、ヤーボイ1mg/kg併用療法群75%の患者で確認された。15%以上の患者で確認された主な治療関連有害事象(TRAE)は疲労、掻痒、皮膚障害、食欲減退、ALT上昇、AST上昇である。
また、グレード3/4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は単剤療法群17%、ヤーボイ3mg/kg併用療法群47%、ヤーボイ1mg/kg併用療法群27%の患者で確認され、治療関連有害事象(TRAE)のために治療中止に至った患者は単剤療法群3%、ヤーボイ3mg/kg併用療法群20%、ヤーボイ1mg/kg併用療法群13%であった。
以上のCheckMate-032試験の結果よりYelena Y. Janjigian氏らは以下のように結論を述べている。”化学療法に抵抗性を示した再発難治性胃がん、食道がん、または胃食道接合部がん患者に対してもオプジーボ単剤療法、オプジーボ+ヤーボイ併用療法の抗腫瘍効果は良好でした。今後はより早期の治療ラインにおいて本治療の有効性を検証していく必要があるでしょう。”