・既治療EGFR陽性、MET遺伝子異常が確認された非小細胞肺がんの患者対象の試験
・ゲフィチニブ+Capmatinibを投与し、その安全性・有効性を検証
・重篤な治療関連有害事象を発症した患者はなく、有効性も示唆された
2018年8月29日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてEGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療後に増悪したEGFR陽性MET遺伝子異常を有する非小細胞肺がん患者に対するMET阻害薬であるCapmatinib(INC280)+ゲフィチニブ併用療法の安全性、有効性を検証した第Ib/II相試験の結果がGuangdong Lung Cancer Institute・Yi-Long Wu氏らにより公表された。
本試験は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療後に増悪したEGFR陽性MET遺伝子異常を有する非小細胞肺がん患者に対して1日1回Capmatinib100mg~800mgもしくは1日2回Capmatinib200mg~600mg+1日1回ゲフィチニブ250mg併用療法を投与し、主要評価項目として第II相推奨用量(RPIID)、客観的奏効率(ORR)を検証した第Ib/II相試験である。なお、第Ib相では61人、第II相では100人の患者が本試験に参加している。
本試験が実施された背景として、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に対する獲得耐性の機序としてMET遺伝子の関わりがあるためである。EGFR陽性非小細胞肺がん患者に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬は高い奏効を示すが、治療開始1年以内に大半の患者は再発を経験する。再発を経験したEGFR陽性非小細胞肺がん患者の5%~26%でMET増幅などのMET遺伝子異常が確認されており、このような患者に対してMET阻害薬であるCapmatinibの有効性が他の試験で確認されていたことから、本試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は60.0歳。人種はアジア人81%(N=131人)、白人19%(N=30人)。ECOG Performance Statusはスコア0が18%(N=29人)、スコア1が78%(N=126人)、スコア2が4%(N=6人)。肺がんの種類は腺がん96%(N=154人)、その他4%(N=7人)。
EGFR遺伝子変異ステータスはL858Rが52%(N=32人)、Exon19deletionが37%(N=23人)、L858R+T7900Mが8%(N=5人)、G719S/A/Cが2%(N=1人)、S768Iが2%(N=1人)。前治療歴は1レジメン53%(N=86人)、2レジメン以上47%(N=75人)。直前の治療歴のあるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の種類はゲフィチニブ45%(N=72人)、エルロチニブ30%(N=48人)、アファチニブ4%(N=6人)、イコチニブ1%(N=2人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である第II相推奨用量(RPIID)は1日2回Capmatinib400mg+1日1回ゲフィチニブ250mgとして決定された。
また、もう1つの主要評価項目である第II相段階における客観的奏効率(ORR)は29%(N=29/100人)、病勢コントロール率(DCR)は73%、奏効持続期間(DOR)中央値は5.6ヶ月(95%信頼区間:3.8-7.2ヶ月)を示した。なお、MET増幅の程度によるサブグループ解析も実施されており、MET増幅(GCN≧6)が確認される患者群では客観的奏効率(ORR)は47%(N=36人)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。吐き気28%、末梢浮腫22%、食欲減退21%、発疹20%。また、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)はアミラーゼ上昇6%、リパーゼ上昇6%。なお、重篤な治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者はいなかった。
以上の第Ib/II相試験の結果よりYi-Long Wu氏らは以下のように結論を述べている。”EGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療後に増悪したEGFR陽性MET遺伝子異常を有する非小細胞肺がん患者に対して、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるゲフィチニブにMET阻害薬であるCapmatinibを併用することで治療効果が期待できます。”