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治療歴のある進行性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-L1抗体薬バベンチオ、ドセタキセルに比べて全生存期間(OS)を統計学有意に改善しない

2018年9月24日、医学誌『The Lancet Oncology』にてプラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢進行した切除不能転移性または再発非小細胞肺がん患者に対するアベルマブ(商品名バベンチオ;以下バベンチオ)単剤療法有効性を比較検証した第III相のJAVELIN Lung 200試験(NCT02395172)の結果がAix Marseille University・Fabrice Barlesi氏らにより公表された。

JAVELIN Lung 200試験とは、 プラチナ製剤2剤併用化学療法後に病勢進行した切除不能転移性または再発非小細胞肺がん患者(N=792人)に対して2週間に1回バベンチオ10mg/kg単剤療法を投与する群(N=396人)、または3週間に1回ドセタキセル75mg/kg単剤療法を投与する群(N=396人)に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間OS)、副次評価項目として無増悪生存期間PFS)などを比較検証した多施設共同オープンラベルの第III相試験である。

本試験が実施された背景として、治療歴のある切除不能転移性または再発非小細胞肺がん患者に対して抗PD-1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)、ペンブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)、抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)の有効性が確認されているため、類似薬であるバベンチオの有効性の検証を目的として実施された。

本試験に登録されたバベンチオ群、ドセタキセル群それぞれの患者背景は下記の通りである。年齢中央値はバベンチオ群64歳(58-69歳)に対してドセタキセル群63歳(57-69歳)。性別はバベンチオ群男性68%(N=269人)、女性32%(N=127人)に対してドセタキセル群男性69%(N=273人)、女性31%(N=123人)。国籍はバベンチオ群で米国3%(N=10人)、ラテンアメリカ14%(N=56人)、欧州44%(N=175人)、アジア25%(N=100人)等に対してドセタキセル群で米国2%(N=8人)、ラテンアメリカ11%(N=44人)、欧州45%(N=177人)、アジア29%(N=113人)等。

ECOG Performance Statusはバベンチオ群でスコア0が36%(N=144人)、スコア1が64%(N=252人)に対してドセタキセル群でスコア0が34%(N=134人)、スコア1が66%(N=262人)。肺がんの組織学的分類はバベンチオ群で扁平上皮がん30%(N=120人)、非扁平上皮がん70%(N=276人)に対してドセタキセル群で扁平上皮がん31%(N=122人)、非扁平上皮がん69%(N=274人)。中枢神経系CNS)転移歴はバベンチオ群であり12%(N=46人)に対してドセタキセル群で8%(N=33人)。

遺伝子変異ステータスはバベンチオ群でEGFR遺伝子変異陽性3%(N=11人)、ALK融合遺伝子変異陽性1%未満(N=1人)に対してドセタキセル群でEGFR遺伝子変異陽性3%(N=13人)、ALK融合遺伝子変異陽性1%未満(N=1人)。PD-L1発現率ステータスはバベンチオ群でPD-L1発現率1%以上群67%(N=264人)、50%以上群42%(N=168人)、80%以上群30%(N=120人)に対してドセタキセル群でPD-L1発現率1%以上群66%(N=263人)、50%以上群37%(N=147人)、80%以上群27%(N=106人)。以上のように両群間における患者背景の大きな偏りはなかった。

本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目であるPD-L1発現率陽性群における全生存期間(OS)中央値はバベンチオ群18.9ヶ月(95%信頼区間:13.5-23.1ヶ月)に対してドセタキセル群17.8ヶ月(95%信頼区間:12.6-22.4ヶ月)、両群間で統計学有意な差は確認されなかった。なお、同様に全患者群における全生存期間(OS)中央値はバベンチオ群18.9ヶ月(95%信頼区間:13.2-22.7ヶ月)に対してドセタキセル群17.8ヶ月(95%信頼区間:12.5-22.4ヶ月)であった。

また、PD-L1発現率1%以上、50%以上、80%以上別の全生存期間(OS)は下記の通りである。PD-L1発現率陽性(≥1%)群における全生存期間(OS)中央値はバベンチオ群11.4ヶ月(95%信頼区間:9.4-13.9ヶ月)に対してドセタキセル群10.3ヶ月(95%信頼区間:8.5-13.0ヶ月)、バベンチオ群で死亡(OS)のリスク10%減少(ハザードリスク比:0.90,95%信頼区間:0.72-1.12,P=0.16)するも統計学的な有意な差は確認されなかった。

PD-L1発現率陽性(≥50%)群における全生存期間(OS)中央値はバベンチオ群13.6ヶ月(95%信頼区間:10.1-18.5ヶ月)に対してドセタキセル群9.2ヶ月(95%信頼区間:5.8-12.4ヶ月)、バベンチオ群で死亡(OS)のリスクを統計学的有意に33%減少(ハザードリスク比:0.67,95%信頼区間:0.51-0.89,P=0.0052)した。

PD-L1発現率陽性(≥80%)群における全生存期間(OS)中央値はバベンチオ群17.1ヶ月(95%信頼区間:10.6-25.0ヶ月)に対してドセタキセル群9.3ヶ月(95%信頼区間:5.8-13.1ヶ月)、バベンチオ群で死亡(OS)のリスクを統計学的有意に41%減少(ハザードリスク比:0.59,95%信頼区間:0.42-0.83,P=0.0022)した。

副次評価項目であるPD-L1発現率陽性群における無増悪生存期間(PFS)中央値はバベンチオ群3.4ヶ月(95%信頼区間:2.7-4.9ヶ月)に対してドセタキセル群4.1ヶ月(95%信頼区間:3.0-5.3ヶ月)、両群間で統計学有意な差は確認されなかった(ハザードリスク比:1.01,95%信頼区間:0.80-1.28,P=0.53)。なお同様に、全患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はバベンチオ群2.8ヶ月(95%信頼区間:2.7-3.5ヶ月)に対してドセタキセル群4.2ヶ月(95%信頼区間:3.3-5.2ヶ月)であった(ハザードリスク比:1.16,95%信頼区間:0.97-1.40,P=0.95)。

もう1つの副次評価項目であるPD-L1発現率1%以上、50%以上、80%以上患者群別の客観的奏効率ORR)は下記の通りである。PD-L1発現率陽性(≥10%)群における客観的奏効率(ORR)はバベンチオ群19%(95%信頼区間:14%-24%)に対してドセタキセル群12%(95%信頼区間:8%-16%)、バベンチオ群で統計学有意に高率(オッズ比:1.76,95%信頼区間:1.08-2.86,P=0.011)であった。

PD-L1発現率陽性(≥50%)群における客観的奏効率(ORR)はバベンチオ群25%(95%信頼区間:19%-32%)に対してドセタキセル群10%(95%信頼区間:6%-16%)、バベンチオ群で統計学有意に高率(オッズ比:2.93,95%信頼区間:1.55-5.55,P=0.0007)であった。

PD-L1発現率陽性(≥80%)群における客観的奏効率(ORR)はバベンチオ群31%(95%信頼区間:23%-40%)に対してドセタキセル群10%(95%信頼区間:5%-18%)、バベンチオ群で統計学有意に高率(オッズ比:3.85,95%信頼区間:1.85-8.03,P=0.0002)であった。

一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はバベンチオ群64%(N=251人)に対してドセタキセル群86%(N=313人)、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はバベンチオ群10%(N=39人)に対してドセタキセル群49%(N=180人)、グレード4以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はバベンチオ群2%(N=8人)に対してドセタキセル群22%(N=79人)、以上のようにドセタキセル群よりもバベンチオ群で治療関連有害事象(TRAE)発症率は低かった。

バベンチオ群で最も確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)はインフュージョンリアクション17%(N=65人)、食欲不振9%(N=34人)、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)はインフュージョンリアクション2%(N=6人)、リパーゼ増加1%(N=4人)であった。

以上のJAVELIN Lung 200試験の結果よりFabrice Barlesi氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のある切除不能転移性または再発非小細胞肺がん患者に対するバベンチオ単剤療法はドセタキセル単剤療法に比べて全生存期間(OS)を統計学有意に改善しませんでした。”

https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(18)30673-9/fulltext#%20

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