・非ホジキンリンパ腫患者を対象にBCL-2阻害薬であるベネトクラクス有効性を検証
・BCL-2ファミリーの発現は治療抵抗性の一因とされている
・ベネトクラクス+標準療法は忍容性があり、抗腫瘍効果も期待できる結果であった
2018年9月1日、医学誌『Annals of Oncology』にて再発難治性非ホジキンリンパ腫患者に対するBCL-2阻害薬であるベネトクラクス+ベンダムスチン(商品名トレアキシン;以下トレアキシン)+リツキシマブ(商品名リツキサン;以下リツキサン)併用療法の安全性、有効性を検証した第Ib相試験(NCT01594229)の結果がDavid Geffen School of Medicine at UCLA・S de Vos氏らにより公表された。
本試験は、再発難治性非ホジキンリンパ腫患者(N=60人;濾胞性リンパ腫32人、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫22人、辺縁帯リンパ腫6人)に対して1日1回ベネトクラクス50–1200mg+トレアキシン+リツキサン併用療法を投与し、主要評価項目として有害事象(AE)発症率、最大耐用(MTD)、第II相推奨用量(RPIID)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)等を検証した多施設共同の第Ib相試験である。
本試験が実施された背景として、非ホジキンリンパ腫を含む造血器腫瘍細胞におけるBCL-2ファミリー発現が、リツキサン+CHOP療法をはじめとした化学療法に対して治療抵抗性を示すためである。
例えば、再発難治性非ホジキンリンパ腫に対する標準治療であるトレアキシン+リツキサン併用療法の治療成績は客観的奏効率(ORR)90%、無増悪生存期間(PFS)中央値23-24ヶ月程度と治療成績は良好である。しかし、大半の再発難治性非ホジキンリンパ腫患者は最終的に治療抵抗性を示し、その原因の1つとしてBCL-2ファミリー発現が関与している可能性が示唆されている。
以上の背景より、再発難治性非ホジキンリンパ腫の標準治療であるトレアキシン+リツキサン併用療法にBCL-2阻害薬であるベネトクラクスを追加した、治療方法の安全性、有効性を本試験により検証された。
本試験の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は62歳(29-90歳)。性別は男性67%(N=40人)。非ホジキンリンパ腫の種類は濾胞性リンパ腫53%(N=32人)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫37%(N=22人)、辺縁帯リンパ腫10%(N=6人)。
前治療レジメン数中央値は3サイクル(1-8)。前治療の種類はリツキサン単剤療法またはリツキサン+化学療法併用100%(N=60人)、トレアキシン単剤療法またはトレアキシン+リツキサン併用療法25%(N=15人)。
本試験の結果、主要評価項目である有害事象(AE)は下記の通りである。全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は98%(N=59人)の患者で報告され、最も多くの患者で確認された有害事象(AE)は吐き気70%、好中球減少症68%、下痢55%、血小板減少性52%、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症60%、リンパ球減少症38%であった。また、重篤な治療有害事象は24人の患者で確認され、発熱好中球減少症8%、病勢進行8%であった。なお、最大耐用(MTD)は到達せず、ベネトクラクスの第II相推奨用量(RPIID)は1日1回800mgとして決定された。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)は完全奏効(CR)30%(N=18人)を含む65%(95%信頼区間:51.6%–76.9%)であった。また、非ホジキンリンパ腫の種類別の客観的奏効率(ORR)は濾胞性リンパ腫で75%(N=24/32人)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で41%(N=9/22人)、辺縁帯リンパ腫で100%(N=6/6人)。
その他評価である奏効持続期間(DOR)中央値は38.3ヶ月(95%信頼区間:10.4ヶ月-未到達)、全生存期間(OS)中央値は未到達、無増悪生存期間(PFS)中央値は10.7ヶ月(95%信頼区間:4.3-21.0ヶ月)であった。
以上の第Ib相試験の結果よりS de Vos氏らは以下のように結論を述べている。”再発難治性非ホジキンリンパ腫患者に対するベネトクラクス+トレアキシン+リツキサン併用療法は忍容性があり、抗腫瘍効果も良好でした。”