2月26日、サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループは、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いたコンパニオン診断システムの使用目的を、非小細胞肺がん(NSCLC)の4つのドライバー遺伝子に拡大し、複数の分子標的薬の適応判定を可能とする一部変更承認を厚生労働省より取得したことを発表した。
なお、2013年より国立がん研究センター東病院の後藤功一氏が研究代表者となり実施中の肺がん遺伝子スクリーニングネットワーク「LC-SCRUM-Japan」を活用した臨床性能評価結果に基づいて承認されている。
「LC-SCRUM-Japan」の研究成果に基づいて、肺がんのマルチ遺伝子診断法が承認(国立がん研究センタープレスリリースへ)
目次
オンコマインにて、肺がんのすべての分子標的薬に対するコンパニオン診断可能に
今回承認された「オンコマイン Dx Target Test CDxシステム(以下、オンコマイン)」は、国内初の次世代シーケンシング技術を用いたコンパニオン診断システムとして、2018年4月4日に製造販売承認を取得し、2018年12月1日の保険収載を経て、2018年12月3日より販売を開始している。
しかしながら、オンコマインは非小細胞肺がんのBRAF遺伝子変異(V600E)を検出し、ダブラフェニブ(商品名タフィンラー)とトラメチニブ(商品名メキニスト)の併用投与に対する適応判定の補助に用いられているのみであった。
今回の一部変更承認によって、オンコマインはBRAF遺伝子変異(V600E)に加え、EGFRエクソン19欠失変異およびEGFRエクソン21 L858R変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子の検出が可能となり、8種類の分子標的薬における治療適応の判定を補助することができるようになった。
なお、今回の承認により、製品名は「オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステム」に変更したとのこと。
コンパニオン診断薬(コンパニオン診断システム)
コンパニオン診断薬(コンパニオン診断システム)とは「治療法の効果や副作用を投薬前に予測するために行なわれる検査のこと」である。
例えば、今回のケースではオンコマインにてBRAF遺伝子変異が検出された方がタフィンラーとメキニストを非小細胞肺がんで使用できたが、今回の承認で「EGFR遺伝子変異が検出された方はイレッサなどが使用可能に、ALK遺伝子変異が検出された方はアレセンサなどが使用可能に、ROS1遺伝子変異が検出された方にはザーコリが使用可能になった」ということである。
なお、コンパニオン診断薬は単なる検査薬のことを指すが、次世代シークエンサーのように検査を解析して結果を出す必要がある場合は、その一連のシステムをコンパニオン診断システムと呼ぶ。
オンコマインのコンパニオン診断としての適応範囲
EGFRエクソン19欠失変異およびEGFRエクソン21 L858R変異
ゲフィチニブ(商品名イレッサ)
アファチニブ(商品名ジオトリフ)
エルロチニブ(商品名タルセバ)
オシメルチニブメシル(商品名タグリッソ)
ALK融合遺伝子
クリゾチニブ(商品名ザーコリ)
アレクチニブ(商品名アレセンサ)
※セリチニブ(商品名ジカディア)は現時点で含まれておらず。
ROS1融合遺伝子
クリゾチニブ(商品名ザーコリ)
BRAF V600E変異
ダブラフェニブ(商品名タフィンラー)とトラメチニブ(商品名メキニスト)併用療法
今春に遺伝子パネル検査も保険収載へ~肺がん医療は複雑化する?~
今回のオンコマインはコンパニオン診断としての承認となる一方、昨年12月には「OncoGuide™ NCCオンコパネル システム(以下、NCCオンコパネル)」と「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル(以下、ファウンデーション・ワン)」が遺伝子パネル検査として承認され、春頃の保険収載を控えるが、どのような範囲で収載されるかが現状不透明となる。
さらに、ファウンデーション・ワンはコンパニオン診断としても承認されているが、現時点で非小細胞肺がんについてはタフィンラーとメキニストのコンパニオン診断では承認を取得していないという問題点がある。
その問題点とは、使用するコンパニオン診断システムにより、患者の治療戦略が変わる可能性を秘めているという点である。
例えば、「非小細胞肺がんとして診断されたばかりに、オンコマインを使用すればタフィンラーとメキニスト併用療法も選択肢に入る可能性があるが、ファウンデーション・ワンを使用するとそうはならない」といった具合だ。
他にもいくつか複雑化する状況は予想できるが、NCCオンコパネルやファウンデーション・ワンが保険収載するまでに状況が変わる可能性があるために、その後に詳しく解説するようにしたい。
関連記事:2つの遺伝子パネル検査が承認取得、一方、肺がん治療スキームは複雑に?(2018/12/27)
(文:可知 健太)