がん情報サイト「オンコロ」

HER2陽性転移性大腸がん患者に対するHER2標的薬パージェタ+ハーセプチン併用療法の奏効率は32%

2019年3月8日、医学誌『The Lancet Oncology』にてHER2遺伝子の増幅を認める複数治療歴のある転移性大腸がん患者に対する抗HER2ヒト化モノクローナル抗体薬であるペルツズマブ(商品名パージェタ;以下パージェタ)+トラスツズマブ(商品名ハーセプチン;以下ハーセプチン)併用療法有効性安全性を検証した第IIa試験のMyPathway試験(NCT02091141)の結果がUniversity of Texas MD Anderson Cancer Center・Funda Meric-Bernstam氏らにより公表された。

本試験は、HER2遺伝子の増幅を認める転移性大腸がん患者(N=57人)に対して3週を1サイクルとしてパージェタ420mg(初回840mg)+ハーセプチン6mg/kg(初回8mg/kg)併用療法を投与し、主要評価項目として担当医判断による客観的奏効率ORR)を検証した非盲検下の多施設共同の第IIa試験である。

本試験が実施された背景として、抗HER2抗体薬であるパージェタ、ハーセプチンはHER2発現する乳がん、胃がんなどの固形がんに対する有効性が確認されている。そして、進行性または転移性大腸癌においてはHER2遺伝子の増幅また高発現が2~6%程度の患者で確認されており、抗HER2抗体薬による抗腫瘍効果が期待されている。以上の背景より、本試験が開始された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は55歳(45-67歳)。性別は男性51%(N=29人)、女性49%(N=28人)。人種は白人79%(N=45人)、黒人7%(N=4人)、アジア人4%(N=2人)、その他9%(N=5人)。ECOG Performance Statusはスコア0が37%(N=21人)、スコア1が61%(N=35人)、スコア2が2%(N=1人)。

初回診断時より治療開始までの期間は27.0ヶ月(15.9-38.7)。原発腫瘍部位は右側21%(N=12人)、左側40%(N=23人)、横行結腸2%(N=1人)、不明2%(N=1人)、直腸35%(N=20人)。前治療歴中央値は4レジメン(2-5)。抗EGFR抗体薬の前治療歴はセツキシマブのみ(商品名アービタックス)30%(N=17人)、パニツムマブのみ(商品名ベクティビックス)18%(N=10人)、アービタックス、ベクティビックス9%(N=5人)、

HER2ステータスはHER2増幅かつ非高発現14%(N=8人)、HER2増幅かつ発現不明39%(N=22人)、HER2増幅かつ高発現47%(N=27人)。KRASステータスはKRAS野生型75%(N=43人)、KRAS変異型23%(N=13人)、不明2%(N=1人)。NRASステータスはNRAS野生型96%(N=55人)、NRAS変異型0%、不明4%(N=2人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。全患者群(N=57人)における客観的奏効率(ORR)は32%(95%信頼区間:20%-45%)、病勢制御率(DCR)は44%(95%信頼区間:31%-58%)、奏効持続期間(DOR)中央値は5.9ヶ月(95%信頼区間:2.8-11.1ヶ月)、無増悪生存期間PFS)中央値は2.9ヶ月(95%信頼区間:1.4-5.3ヶ月)、全生存期間OS)中央値は11.5ヶ月(95%信頼区間:7.7ヶ月-未到達)を示した。

また、KRAS野生型患者(N=43人)における客観的奏効率(ORR)は40%(95%信頼区間:25%-56%)、病勢制御率(DCR)は56%(95%信頼区間:40%-71%)、奏効持続期間(DOR)中央値は6.1ヶ月(95%信頼区間:2.9-11.1ヶ月)、無増悪生存期間(PFS)中央値は5.3ヶ月(95%信頼区間:2.7-6.1ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は14.0ヶ月(95%信頼区間:8.0ヶ月-未到達)を示した。

KRAS変異型患者(N=13人)における客観的奏効率(ORR)は8%(95%信頼区間:0.2%-36%)、病勢制御率(DCR)は8%(95%信頼区間:0.2%-36%)、奏効持続期間(DOR)中央値は2.7ヶ月、無増悪生存期間(PFS)中央値は1.4ヶ月(95%信頼区間:1.2-2.8ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は8.5ヶ月(95%信頼区間:3.9ヶ月-未到達)を示した。

一方の安全性として、最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下痢33%(N=19人)、倦怠感32%(N=18人)、吐き気30%(N=17人)。グレード3から4の治療関連有害事象(TRAE)は低カリウム血症5%(N=3人)、腹痛5%(N=3人)。なお、重篤な治療関連有害事象(TRAE)発症率は18%を示したが、治療関連死亡が確認された患者はいなかった。

以上のMyPathway試験の結果よりUniversity of Texas MD Anderson Cancer Center・Funda Meric-Bernstam氏らは以下のように結論を述べている。”HER2遺伝子の増幅を認める複数治療歴のある転移性大腸がん患者に対するパージェタ+ハーセプチン併用療法は忍容性も問題なく、抗腫瘍効果も良好でした。”

Pertuzumab plus trastuzumab for HER2-amplified metastatic colorectal cancer (MyPathway): an updated report from a multicentre, open-label, phase 2a, multiple basket study(Lancet Ocology, Published:March 08, 2019)

×
モバイルバージョンを終了