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切除後の胆道がん患者に対する術後化学療法としてのゼローダ単剤療法群と経過観察群を直接比較、死亡リスクを19%減少

この記事の3つのポイント
・切除後の胆道がんまたは筋肉浸潤性胆のうがん患者を対象とした第3相試験
・術後化学療法としてのゼローダ単剤療法と経過観察を比較検証
ITT解析で全生存期間の改善効果を示せなかったが、治療選択肢になり得る可能性

2019年3月25日、医学誌『The Lancet Oncology』にて切除後の胆道がん患者に対する術後化学療法としてのカペシタビン(商品名ゼローダ;以下ゼローダ)単剤療法の有効性安全性を比較検証した第3相のThe BILCAP試験(2005-003318-13)の結果がSouthampton General HospitalのJohn N Primrose氏らにより公表された。

本試験は、切除後の胆道がんまたは筋肉浸潤性胆のうがん患者(N=447人)に対して21日を1サイクルとして1~14日目に1日2回ゼローダ1250mg/m2単剤療法を投与する群(N=223人)、または経過観察する群(N=224人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同ランダム化の第3相試験である。

本試験が実施された背景として、術後の胆道がん患者の全生存期間(OS)中央値は18~30ヶ月程度であるが、リンパ節転移のある患者などではその予後は悪化する。また、切除不能胆道がん患者に対する標準治療としてはシスプラチン+ゲムシタビン併用療法が確立しているが、その有効性はランダム化試験にて確認されていない。

以上の背景より、大腸がん、食道がん、胃がんなどに対してその有効性が単剤、併用療法で確認されており、かつ胆道がんに対してその有効性が確認されている抗がん剤であるフッ化ピリミジン系の薬剤であるゼローダ単剤療法の有用性が本試験で確認された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値

ゼローダ群=62歳(55-68歳)
経過観察群=64歳(55-69歳)

性別

ゼローダ群=男性50%(N=112人)、女性50%(N=111人)
経過観察群=男性50%(N=111人)、女性50%(N=113人)

切除ステータス

ゼローダ群=R0が62%、R1が38%
経過観察群=R0が63%、R1が38%

ECOG Performance Status

ゼローダ群=スコア0が45%、スコア1が52%、スコア2が3%
経過観察群=スコア0が45%、スコア1が52%、スコア2が3%

進行期

ゼローダ群=ステージIが26%、ステージIIが61%、ステージIIIが13%、ステージIVが1%未満
経過観察群=ステージIが27%、ステージIIが64%、ステージIIIが8%、ステージIVが0%

リンパ節ステータス

ゼローダ群=N0が52%、N1が48%
経過観察群=N0が54%、N1が46%

なお、両群間における患者背景に大きな偏りはなかった。

以上の背景を有する患者に対する追跡期間中央値60ヶ月(37-60ヶ月)時点における本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目であるITT解析による全生存期間(OS)中央値はゼローダ群51.1ヶ月(95%信頼区間:34.6-59.1ヶ月)に対して経過観察群36.4ヶ月(95%信頼区間:29.7-44.5ヶ月)、ゼローダ群で死亡(OS)のリスクを19%減少(HR:0.81,95%信頼区間:0.63-1.04,P=0.097)するも統計学的有意な差は確認されなかった。

また、Per Protocol解析による全生存期間(OS)中央値はゼローダ群53ヶ月(95%信頼区間:40ヶ月-未到達)に対して経過観察群36ヶ月(95%信頼区間:30-44ヶ月)、ゼローダ群で死亡(OS)のリスクを29%減少(HR:0.71,95%信頼区間:0.55-0.92,P=0.01)した。

ITT解析による無再発生存期間RFS)中央値はゼローダ群24.4ヶ月(95%信頼区間:18.6-35.9ヶ月)に対して経過観察群17.5ヶ月(95%信頼区間:12.0-23.8ヶ月)、ゼローダ群で24ヶ月時点の再発または死亡(RFS)のリスクを25%減少(HR:0.75,95%信頼区間:0.58-0.98,P=0.033)した。

また、Per Protocol解析による無再発生存期間(RFS)中央値はゼローダ群25.9ヶ月(95%信頼区間:19.8-46.3ヶ月)に対して経過観察群17.4ヶ月(95%信頼区間:12.0-23.7ヶ月)、ゼローダ群で24ヶ月時点の再発または死亡(RFS)のリスクを30%減少(HR:0.70,95%信頼区間:0.54-0.92,P=0.0093)した。

一方の安全性として、ゼローダ群で最も多くの患者で確認されたグレード1~2の治療関連有害事象(TRAE)は倦怠感75%、手足症候群60%、下痢57%、吐き気50%、口内炎44%、嘔吐23%、胃痛または腹痛29%などであった。また、最も多くの患者で確認されたグレード3の治療関連有害事象(TRAE)は手足症候群20%、倦怠感8%、下痢8%、胃痛または腹痛5%などであった。

以上のThe BILCAP試験の結果よりJohn N Primrose氏らは以下のように結論を述べている。”切除後の胆道がん患者に対する術後化学療法としてゼローダ単剤療法は、ITT解析で全生存期間(OS)の改善効果を示すことはできませんでした。しかしながら、Per Protocol解析では全生存期間(OS)が延長し、忍容性も問題ないことから、本患者の治療選択肢になり得る可能性が示唆されました。”

Capecitabine compared with observation in resected biliary tract cancer (BILCAP): a randomised, controlled, multicentre, phase 3 study(The Lancet Oncology, Published:March 25, 2019)

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