・転移性大腸がん患者が対象の第2相試験
・ファーストライン治療としてのmFOLFOX6またはFOLFIRI+アバスチン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間、全生存期間の結果は両併用療法で同様であり、ERCC1高発現患者でも同様だった
2019年5月、医学誌『Clinical Cancer Research』にて転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としてのmFOLFOX6+抗VEGF-A抗体薬であるベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)併用療法、FOLFIRI+アバスチン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相のMAVERICC試験(NCT01374425)の結果がMassachusetts General HospitalのAparna R. Parikh氏らにより公表された。
MAVERICC試験とは、転移性大腸がん患者(N=376人)に対するファーストライン治療としてmFOLFOX6+アバスチン併用療法を投与する群(N=188人)、またはFOLFIRI+アバスチン併用療法を投与する群(N=188人)に無作為に振り分け、主要評価項目としてプラチナ製剤への耐性獲得のマーカーであると考えられている腫瘍内ERCC1発現率別の無増悪生存期間(PFS)などを比較検証したオープンラベルの国際多施設共同第2相試験である。
本試験が実施された背景として、転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としてのmFOLFOX6ベース、FOLFIRIベースの化学療法はどちらが優れているか明らかになっていないためである。また、腫瘍内ERCC1発現はプラチナ系抗がん剤に対する耐性獲得のマーカーであると考えられている。以上の背景より、本試験が実施された。
本試験の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はmFOLFOX6+アバスチン併用群10.1ヶ月に対してFOLFIRI+アバスチン併用群12.6ヶ月、両群間で統計学有意な差は確認されなかった(HR:0.79,95%信頼区間:0.61–1.01,P=0.06)。また、全生存期間(OS)中央値はmFOLFOX6+アバスチン併用群27.5ヶ月に対してFOLFIRI+アバスチン併用群23.9ヶ月、両群間で統計学有意な差は確認されなかった(HR:0.76,95%信頼区間:0.56–1.04,P=0.09)。
また、腫瘍内ERCC1発現率別の結果は下記の通りである。mFOLFOX6+アバスチン併用群における無増悪生存期間(PFS)中央値はERCC1高発現群(N=124人)9.9ヶ月に対してはERCC1低発現群(N=64人)11.0ヶ月を示した(HR:0.94,95%信頼区間:0.66-1.34,P=0.744)。全生存期間(OS)中央値はERCC1高発現群(N=64人)22.5ヶ月に対してはERCC1低発現群(N=64人)25.5ヶ月を示した(HR:1.14,95%信頼区間:0.75-1.73,P=0.532)。
FOLFIRI+アバスチン併用群における無増悪生存期間(PFS)中央値はERCC1高発現群(N=67人)11.2ヶ月に対してはERCC1低発現群(N=120人)12.7ヶ月を示した(HR:1.10,95%信頼区間:0.76-1.60,P=0.601)。全生存期間(OS)中央値はERCC1高発現群(N=67人)26.5ヶ月に対してはERCC1低発現群(N=120人)27.9ヶ月を示した(HR:1.30,95%信頼区間:0.81-2.08,P=0.282)。
以上のMAVERICC試験の結果よりAparna R. Parikh氏らは以下のように結論を述べている。”転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としてのmFOLFOX6+アバスチン併用療法、FOLFIRI+アバスチン併用療法は、ERCC1高発現の患者においても無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の結果は同様でした。”