・、完全切除されたステージII~IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・ビノレルビン+シスプラチン併用療法とペメトレキセド+シスプラチン併用療法の有効性・安全性を比較
・優越性は示せなかったが、治療関連有害事象発症率はペメトレキセド+シスプラチンの方が軽微だった
2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2019)にて、完全切除されたステージII~IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対するビノレルビン+シスプラチン併用療法、ペメトレキセド+シスプラチン併用療法の有効性、安全性を比較した第3相のJIPANG試験の結果が静岡県立静岡がんセンターの釼持広知氏らにより公表された。
JIPANG試験とは、完全切除されたステージII~IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者(N=804人)に対して3週を1サイクルとして1、8日目にビノレルビン25mg/m2+1日目にシスプラチン75mg/m2併用療法を最大4サイクル投与する群(N=395人)、または3週を1サイクルとして1日目にペメトレキセド500mg/m2+1日目にシスプラチン75mg/m2併用療法を最大4サイクル投与する群(N=389人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無再発生存期間(RFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、毒性などを比較検証したランダム化の第3相試験である。
本試験が実施された背景として、非小細胞肺がん患者に対する術前化学療法はシスプラチンベースの化学療法の有効性、安全性が示されている。しかしながら、シスプラチンベースの化学療法の中でどの治療レジメンが最適かどうかは明らかになっていない。以上の背景より、シスプラチンベースの化学療法を直接比較するJIPANG試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
ビノレルビン+シスプラチン群=65歳(33-75歳)
ペメトレキセド+シスプラチン群=64歳(28-75歳)
性別
ビノレルビン+シスプラチン群=男性 59.5%、女性 40.5%
ペメトレキセド+シスプラチン群=男性 58.4%、女性 41.6%
ECOG Performance Status
ビノレルビン+シスプラチン群=スコア0 77.5%、スコア1 22.5%
ペメトレキセド+シスプラチン群=スコア0 77.8%、スコア1 24.2%
組織学的分類
ビノレルビン+シスプラチン群=腺がん 95.9%
ペメトレキセド+シスプラチン群=腺がん 95.9%
EGFR遺伝子ステータス
ビノレルビン+シスプラチン群=陽性 24.1%
ペメトレキセド+シスプラチン群=陽性 24.9%
なお、両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無再発生存期間(RFS)中央値はビノレルビン+シスプラチン群37.3ヶ月(95%信頼区間:28.8ヶ月-52.5ヶ月)に対してペメトレキセド+シスプラチン群38.9ヶ月(95%信頼区間:28.7ヶ月-55.3ヶ月)、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.98,95%信頼区間:0.81-1.20)。
また、24ヶ月無再発生存率(RFS)はビノレルビン+シスプラチン群60.7%(95%信頼区間:55.7%-65.3%)に対してペメトレキセド+シスプラチン群58.3%(95%信頼区間:53.2%-63.0%)。36ヶ月無再発生存率(RFS)はビノレルビン+シスプラチン群50.2%(95%信頼区間:45.0%-55.2%)に対してペメトレキセド+シスプラチン群51.1%(95%信頼区間:45.8%-56.0%)。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はビノレルビン+シスプラチン群で未到達に対してペメトレキセド+シスプラチン群未到達、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.98,95%信頼区間:0.71-1.35)。
また、24ヶ月全生存率(OSはビノレルビン+シスプラチン群91.8%(95%信頼区間:88.6%-94.1%)に対してペメトレキセド+シスプラチン群92.5%(95%信頼区間:89.3%-94.7%)。36ヶ月全生存率(OS)はビノレルビン+シスプラチン群83.5%(95%信頼区間:79.2%-87.0%)に対してペメトレキセド+シスプラチン群87.2%(95%信頼区間:83.8%-90.2%)。
一方の安全性として、ペメトレキセド+シスプラチン群に比べてビノレルビン+シスプラチン群で発現率の高かった治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。全グレードの脱毛症がビノレルビン+シスプラチン群25.8%に対してペメトレキセド+シスプラチン群2.3%、全グレードの発熱好中球減少症がビノレルビン+シスプラチン群11.6%に対してペメトレキセド+シスプラチン群0.3%。また、グレード4の好中球減少症がビノレルビン+シスプラチン群56.6%に対してペメトレキセド+シスプラチン群0.3%。グレード3の貧血、白血球数減少がビノレルビン+シスプラチン群9.3%に対してペメトレキセド+シスプラチン群2.8%。
以上のJIPANG試験の結果より釼持広知氏らは以下のように結論を述べている。”完全切除されたステージII~IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対するペメトレキセド+シスプラチン併用療法は、ビノレルビン+シスプラチン併用療法に対する優越性を示すことができませんでした。しかしながら、治療関連有害事象(TRAE)発症率はペメトレキセド+シスプラチン併用療法の方が軽微でした。”