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未治療の進行非扁平上皮型非小細胞肺がん患者に対する維持療法としてのアリムタ+アバスチン併用、無増悪生存期間を延長するものの全生存期間の延長はしない

この記事の3つのポイント
・未治療の進行非扁平上皮型非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
維持療法としてのアリムタ+アバスチン併用療法の有効性安全性を比較検証
無増悪生存期間は良好な結果を示したが、全生存期間は統計学的有意な差は確認されなかった

2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、未治療の進行非扁平上皮型非小細胞肺がん患者に対する維持療法としてのペメトレキセド(商品名アリムタ;以下アリムタ)+ベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のECOG-ACRIN 5508試験(NCT01107626)の結果がWinship Cancer InstituteのSuresh S. Ramalingam氏らにより公表された。

ECOG-ACRIN 5508試験とは、未治療の進行非扁平上皮型非小細胞肺がん患者(N=1516人)に対してファーストライン治療としてアバスチン+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法後、維持療法としてアリムタ単剤療法(N=294人)、アバスチン単剤療法(N=287人)、アリムタ+アバスチン併用療法(N=293人)を無作為に振り分け、主要評価項目として無作為化からの全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、奏効率(RR)、安全性を比較検証した第3相試験である。

本試験が実施された背景として、進行非扁平上皮型非小細胞肺がん患者に対する維持療法の標準治療はアリムタ単剤療法であるが、別の第2相試験にてアリムタ+アバスチン併用療法により無増悪生存期間(PFS)を延長する可能性が示唆されている。また、本患者に対する維持療法としてのアリムタ単剤、アバスチン単剤、アリムタ+アバスチン併用療法3つの比較した試験は存在しない。以上の背景より本患者が実施された。

本患者に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
アリムタ単剤群=63歳
アバスチン単剤群=65歳
アリムタ+アバスチン併用群=64歳

性別
アリムタ単剤群=女性 51%
アバスチン単剤群=女性 51%
アリムタ+アバスチン併用群=女性 51%

喫煙歴
アリムタ単剤群=なし 11%
アバスチン単剤群=なし 10%
アリムタ+アバスチン併用群=なし 11%

腺がん割合
アリムタ単剤群=88%
アバスチン単剤群=91%
アリムタ+アバスチン併用群=91%

Performance Status
アリムタ単剤群=スコア0 46%
アバスチン単剤群=スコア0 43%
アリムタ+アバスチン併用群=スコア0 45%

転移の有無
アリムタ単剤群=あり 16%
アバスチン単剤群=あり 16%
アリムタ+アバスチン併用群=あり 14%

なお、3群間で患者背景に大きな偏りはなかった。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はアリムタ単剤群15.9ヶ月に対してアバスチン単剤群14.4ヶ月に対してアリムタ+アバスチン併用群16.4ヶ月、3群間で統計学的有意な差は確認されなかった。

副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はアリムタ単剤群5.1ヶ月に対してアバスチン単剤群4.2ヶ月に対してアリムタ+アバスチン併用群7.5ヶ月、アリムタ単剤群、アバスチン単剤群に比べてアリムタ+アバスチン併用群で良好な結果を示した。

一方の安全性として、グレード3/4の血液関連治療関連有害事象(TRAE)発症率は下記の通りである。貧血はアリムタ単剤群で7%/0%に対してアバスチン単剤群で2%/0%に対してアリムタ+アバスチン併用群で6%/1%未満。リンパ球減少症はアリムタ単剤群で4%/1%に対してアバスチン単剤群で1%/0%に対してアリムタ+アバスチン併用群で7%/1%。

好中球減少症はアリムタ単剤群で5%/2%に対してアバスチン単剤群で1%/0%に対してアリムタ+アバスチン併用群で8%/3%未満。白血球減少症はアリムタ単剤群で4%/1%に対してアバスチン単剤群で0%/0%に対してアリムタ+アバスチン併用群で4%/1%。血小板減少はアリムタ単剤群で2%/1%に対してアバスチン単剤群で0%/0%に対してアリムタ+アバスチン併用群で0%/0%未満。

以上のECOG-ACRIN 5508試験の結果よりSuresh S. Ramalingam氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の進行非扁平上皮型非小細胞肺がん患者に対する維持療法としてのアリムタ+アバスチン併用は、無増悪生存期間(PFS)を延長するものの、全生存期間(OS)の延長は示すことができませんでした。また、単剤療法に比べて併用療法では治療関連有害事象(TRAE)発症率が高率になるため、本患者に対する維持療法としては単剤療法が推奨されます。”

ECOG-ACRIN 5508: Pemetrexed, bevacizumab or the combination as maintenance therapy for advanced non-squamous NSCLC.(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract No:9002)

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