・EGFR‐TKI抵抗性のEGFR遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん患者が対象の第1相試験
・HER3を標的とした抗体薬物複合体U3-1402単剤療法の有効性・安全性を検証
・副次評価項目の抗腫瘍効果はT790M、C797S変異陽性など様々な耐性機序を有する患者でも確認
2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)抵抗性のEGFR遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するHER3を標的とした抗体薬物複合体であるU3-1402単剤療法の有効性、安全性を検証した第1相試験の結果がDana-Farber Cancer InstituteのPasi A. Jänne氏らにより公表された。
本試験は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるエルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ治療後に病勢進行したEGFR遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して3週を1サイクルとしてU3-1402 3.2~6.4mg/kg単剤療法を投与し、主要評価項目として安全性、忍容性、副次評価項目として抗腫瘍効果を検証した第1相用量漸増および拡大試験である。
本試験が実施された背景として、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)抵抗性のあるEGFR遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療選択肢は限られている。また、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の約57~67%程度の患者でHER3が発現している、以上の背景より、HER3を標的とした抗体薬物複合体であるU3-1402単剤療法の有用性を本患者に検証する目的で試験が開始された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は63.0歳(51.0-80.0歳)。性別は男性39.1%、女性60.9%。人種は白人56.5%、アジア人30.4%、黒人4.3%、その他8.7%。ECOG Performance Statusはスコア0が39.1%、スコア1が60.9%。前治療歴はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)100.0%、オシメルチニブ91.3%、化学療法43.5%。転移部位は中枢神経系(CNS)60.9%、肝臓39.1%、肺17.4%。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である安全性としては用量制限毒性(DLT)としてはグレード3の好中球減少症、グレード4の血小板減少性が確認された。副次評価項目である抗腫瘍効果として、全奏効率(ORR)は25%(部分奏効(PR)4/16例)。T790M、C797S変異陽性など様々な耐性機序を有する患者においても抗腫瘍効果が確認された。
以上の第1相試験の結果よりPasi A. Jänne氏らは以下のように結論を述べている。”EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)抵抗性のEGFR遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するHER3を標的とした抗体薬物複合体U3-1402単剤療法は、安全性、忍容性も良好であり、様々な耐性機序を有する患者においても抗腫瘍効果が確認されました。”