・切除不能転移性悪性黒色腫患者が対象の第3相試験
・エパカドスタット+キイトルーダ併用療法の有効性・安全性を検証
・プラセボ+キイトルーダ併用療法に比べて無増悪生存期間を統計学的有意に延長せず
2019年6月17日、医学誌『The Lancet Oncology』にて切除不能転移性悪性黒色腫(メラノーマ)患者に対する経口IDO(インドレアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ)1阻害薬であるエパカドスタット+抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のECHO-301/KEYNOTE-252試験(NCT02752074)の結果がMelanoma Institute AustraliaのGeorgina V Long氏らにより公表された。
ECHO-301/KEYNOTE-252試験とは、切除不能転移性悪性黒色腫(メラノーマ)患者(N=706人)に対して1日2回エパカドスタット200mg+3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg併用療法を投与する群(N=354人)、またはプラセボ+3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg併用療法を投与する群(N=352人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、安全性などを比較検証した国際多施設共同プラセボ比較の第3相試験である。
本試験が実施された背景として、免疫チェックポイント阻害薬は悪性黒色腫(メラノーマ)患者に対して治療効果のできる薬剤であることが判っている。また、第1/2相のECHO-202/KEYNOTE-037試験にて進行性悪性黒色腫(メラノーマ)患者に対するエパカドスタット+キイトルーダ併用療法は抗腫瘍効果が良好であることが判っている。以上の背景より本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値12.4ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はエパカドスタット群4.7ヶ月(95%信頼区間:2.9-6.8ヶ月)に対してプラセボ群4.9ヶ月(95%信頼区間:2.9-6.8ヶ月)、両群間で病勢進行または死亡(PFS)のリスクに統計学的有意な差は確認されなかった(ハザード比:1.00,95%信頼区間:0.83-1.21,P=0.52)。
また、もう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はエパカドスタット群未到達に対してプラセボ群未到達、両群間で死亡(OS)のリスクに統計学的有意な差は確認されなかった(ハザード比:1.13,95%信頼区間:0.86-1.49,P=0.81)。
一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はエパカドスタット群4%(N=14人)に対してプラセボ群3%(N=11人)。重篤な治療関連有害事象(TRAE)発症率はエパカドスタット群10%(N=37人)に対してプラセボ群9%(N=32人)。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は両群間で1人も確認されなかった。
以上のECHO-301/KEYNOTE-252試験の結果よりGeorgina V Long氏らは以下のように結論を述べている。”切除不能転移性悪性黒色腫(メラノーマ)患者に対する経口IDO1阻害薬エパカドスタット+抗PD-1抗体薬キイトルーダ併用療法は、プラセボ+キイトルーダ併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に延長しませんでした。以上の結果より、IDO1阻害薬が抗PD-1抗体薬の抗腫瘍効果を高める役割については本試験で明らかになりませんでした。”