2019年7月19日、医学誌『The Lancet Oncology』にて進行性および難治性デスモイド腫瘍患者に対すマルチチロシンキナーゼ阻害薬であるパゾパニブ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第2相試験(NCT01876082)の結果がInstitut BergoniéのMaud Toulmonde氏らにより公表された。
本試験は、18歳以上の進行性および難治性デスモイド腫瘍患者(N=72人)に対して1日1回パゾパニブ800mg単剤療法を投与する群(N=48人)、またはビンブラスチン5mg/m2+メトトレキサート30mg/m2併用療法を投与する群(N=24人)に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として6ヶ月無増悪生存率(PFS)、副次評価項目として安全性などを比較検証したオープンラベルランダム化の第2相試験である。
本試験が実施された背景として、デスモイド腫瘍に対して有効性が確認されている唯一の化学療法はビンブラスチン+メトトレキサート併用療法であり、それ以外に承認されている治療法は現在のところ存在しない。進行性および難治性デスモイド腫瘍の特徴の1つとしてVEGFの高発現であり、 VEGF 受容体1、2、3を標的にするパゾパニブが有用である可能性がある。以上の背景より、進行性および難治性デスモイド腫瘍患者に対するパゾパニブの有用性を確認する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値23.4ヶ月(17.1-25.5ヶ月)、評価可能であった43人の患者群における結果は下記の通りである。主要評価項目である6ヶ月無増悪生存率(PFS)はパゾパニブ群83.7%(95%信頼区間:69.3%-93.2%)に対してビンブラスチン+メトトレキサート群45.0%(95%信頼区間:23.1%-68.5%)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)はパゾパニブ群で高血圧21%(N=10人)、下痢15%(N=7人)に対してビンブラスチン+メトトレキサート群で好中球減少症45%(N=10人)、肝トランスアミナーゼ18%(N=4人)。治療関連の重篤な有害事象(SAE)はパゾパニブ群で23%(N=11人)に対してビンブラスチン+メトトレキサート群で27%であった。(N=6人)。
以上の第2相試験の結果よりMaud Toulmonde氏らは以下のように結論を述べている。”進行性および難治性デスモイド腫瘍患者に対すマルチチロシンキナーゼ阻害薬パゾパニブは、良好な抗腫瘍効果を示し、唯一の治療法であるビンブラスチン+メトトレキサートに代わる治療選択肢になる可能性が示唆されました。”