・転移性大腸がん患者が対象の第3相試験
・ファーストライン治療としてのFOLFOXIRI+アバスチン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・FOLFOXIRI群でファーストライン治療後の病勢進行または死亡のリスクを26%統計学的有意に改善
2020年3月9日、医学誌『The Lancet Oncology』にて転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としてのFOLFOXIRI+抗VEGFモノクローナル抗体であるベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のTRIBE2試験(NCT02339116)の結果がUniversity Hospital of PisaのChiara Cremolini氏らにより公表された。
TRIBE2試験とは、転移性大腸がん患者(N=679人)に対するファーストライン治療としてFOLFOXIRI+アバスチン併用療法の病勢進行後に再びFOLFOXIRI+アバスチン併用療法を投与する群(N=339人)、またはFOLFOX+アバスチン併用療法の病勢進行後にFOLFIRI+アバスチン併用療法を投与する群(N=340人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間2(PFS2:無作為化より初回の病勢進行または死亡イベント後に病勢進行が発生するまでの期間)、副次評価項目として安全性などを比較検証した第3相試験である。
本試験が開始された背景として、トリプレットレジメンであるFOLFOXIRI併用療法はダブレットレジメンであるFOLFOX、FOLFIRI併用療法に比べて転移性大腸がんの予後を改善する可能性が高いことが臨床試験の結果より示唆されている。しかしながら、FOLFOXIRI併用療法の毒性は高いため、FOLFOXIRI併用療法後に病勢進行した場合の治療が困難である可能性がある。以上の背景より、ファーストライン治療で病勢進行した場合のその後の治療継続性を比較検証する目的でTRIBE2試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値35.9ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間2(PFS2)中央値はFOLFOXIRI群19.2ヶ月(95%信頼区間:17.3‐21.4ヶ月)に対してFOLFOX-FOLFIRI群16.4ヶ月(95%信頼区間:15.1‐17.5ヶ月)、FOLFOXIRI群でファーストライン治療後の病勢進行または死亡のリスクを26%(HR:0.74,95%信頼区間:0.63‐0.88,P=0.0005)統計学的有意に改善した。
一方の安全性として、ファーストライン治療中に最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は下痢がFOLFOXIRI群17%に対してFOLFOX-FOLFIRI群5%、好中球減少症がFOLFOXIRI群50%に対してFOLFOX-FOLFIRI群21%、動脈性高血圧がFOLFOXIRI群7%に対してFOLFOX-FOLFIRI群25%。また、重篤な有害事象(SAE)発症率はFOLFOXIRI群25%に対してFOLFOX-FOLFIRI群17%を示した。
以上のTRIBE2試験の結果よりChiara Cremolini氏らは以下の結論を述べている。”転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としてのFOLFOXIRI+抗VEGFモノクローナル抗体アバスチン併用療法、病勢進行後の再投与は無増悪生存期間2(PFS2)を統計学的有意に改善し、ダブレット療法よりも優れた治療選択肢になり得る可能性が示唆されました。”