・2レジメン以上の治療歴のあるHER2陽性進行性胃または胃食道接合部がん患者が対象の第2相試験
・エンハーツ単剤療法の有効性・安全性を検証
・主要評価項目である客観的奏効率はエンハーツ群51.3%に対して主治医選択の化学療法群は14.3%だった
2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にて2レジメン以上の治療歴のあるHER2陽性進行性胃または胃食道接合部(GEJ)がん患者に対するトラスツズマブ デルクステカン(商品名エンハーツ;以下エンハーツ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相のDESTINY-Gastric01試験(NCT03329690)の結果が国立がん研究センター 東病院の設樂 紘平氏らにより公表される。
DESTINY-Gastric01試験とは、2レジメン以上の治療歴のあるHER2陽性進行性胃または胃食道接合部(GEJ)がん患者(N=187人)に対して3週を1サイクルとしてエンハーツ6.4mg/kg単剤療法を投与する群(N=125人)、または主治医選択の化学療法(イリノテカン、パクリタキセル等)を投与する群(N=62人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した多施設共同非盲検下の第2相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はエンハーツ群51.3%(N=61/119人)に対して主治医選択の化学療法群14.3%(8/56人)を示した。
副次評価項目である病勢コントロール率(DCR)はエンハーツ群85.7%に対して主治医選択の化学療法群62.5%。無増悪生存期間(PFS)中央値はエンハーツ5.6ヶ月に対して主治医選択の化学療法群3.5ヶ月、エンハーツ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを53%減少(HR:0.47,95%信頼区間:0.31-0.71,P=0.0003)した。
全生存期間(OS)中央値はエンハーツ12.5ヶ月に対して主治医選択の化学療法群8.4ヶ月、エンハーツ群で死亡(OS)のリスクを41%減少(HR:0.59,95%信頼区間:0.39-0.88,P=0.0097)した。12か月全生存率(OS)はエンハーツ群52.1%に対して主治医選択の化学療法群28.9%を示した。
一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はエンハーツ群85.6%に対して主治医選択の化学療法群56.5%、最も多くの患者で確認された有害事象(AE)は下記の通りである。好中球数減少はエンハーツ群51.2%に対して主治医選択の化学療法群24.2%、貧血はエンハーツ群37.6%に対して主治医選択の化学療法群22.6%、白血球数減少はエンハーツ群20.8%に対して主治医選択の化学療法群11.3%。エンハーツ関連の間質性肺疾患(ILD)は9.6%(N=12人)の患者で確認された。
以上のDESTINY-Gastric01試験より設樂 紘平氏らは以下のように結論を述べている。”複数治療歴のあるHER2陽性進行性胃または胃食道接合部(GEJ)がん患者に対するエンハーツ単剤療法は、現在の標準治療に比べて客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)を臨床的意義ある改善を示しました。”