・ハイリスク筋層浸潤尿路上皮がん患者が対象の第3相試験
・アジュバント療法としてのテセントリク単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・病勢進行または死亡によるリスクを11%減少するも、統計学的に有意な改善は確認されず
2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にハイリスク筋層浸潤尿路上皮がん患者に対するアジュバント療法としての抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のIMvigor010試験(NCT02450331)の結果がRobert H. Lurie Comprehensive Cancer CenterのMaha H. A氏らにより公表された。
IMvigor010試験とは、ハイリスク筋層浸潤尿路上皮がん患者に対するアジュバント療法として3週を1サイクルとしてテセントリク1200mg単剤療法を投与する群(N=406人)、または経過観察をする群(N=403人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無病生存期間(DFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、安全性などを比較検証した第3相試験である。
本試験が開始された背景として、ハイリスク筋層浸潤尿路上皮がんの現在の標準治療はシスプラチンベースの術前化学療法+根治的切除であり、アジュバント療法の有用性は確認されていない。以上の背景より、複数の固形がんに対して有効性を示している免疫チェックポイント阻害薬の術後化学療法としての有用性が本試験で検証された。
本試験の結果、主要評価項目である無病生存期間(DFS)中央値はテセントリク群19.4ヶ月(95%信頼区間:15.9-24.8ヶ月)に対して経過観察群16.6ヶ月(95%信頼区間:11.2-24.8ヶ月)、テセントリク群で病勢進行または死亡によるリスクを11%(HR:0.89,95%信頼区間:0.74-1.08)減少するも、両群間で統計学有意な改善は確認されなかった。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はテセントリク群未到達に対して経過観察群未到達、テセントリク群で死亡(OS)によるリスクを15%(HR:0.85,95%信頼区間:0.66-1.09)減少するも、両群間で統計学有意な改善は確認されなかった。
以上のIMvigor010試験の結果よりMaha H. A氏らは以下のように結論を述べている。”ハイリスク筋層浸潤尿路上皮がん患者に対するアジュバント療法としての抗PD-L1抗体薬テセントリクは、経過観察に比べて無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)の優越性を示すことができませんでした。”