・初発中枢神経系原発悪性リンパ腫患者が対象の第2相試験
・リツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン+シタラビン+低線量全脳照射療法の有効性・安全性を検証
・化学療法単独に比べて無増悪生存期間を統計学的有意に改善
2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にて初発中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)患者に対するリツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン+シタラビン(R-MPV-A)+低線量全脳照射療法(LD-WBRT)の有効性、安全性を比較検証した第2相のNRG Oncology/RTOG 1114試験(NCT01399372)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのAntonio Marcilio Padula Omuro氏らにより公表された。
NRG Oncology/RTOG 1114試験とは、初発中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)患者に対してリツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン+シタラビン(R-MPV-A)+低線量全脳照射療法(LD-WBRT)を投与する群(N=43人)、またはリツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン+シタラビン(R-MPV-A)併用療法を投与する群(N=44人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などを比較検証した第2相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値55ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はR-MPV-A+LD-WBRT群未到達に対してR-MPV-A群2.1年、R-MPV-A+LD-WBRT群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを49%(HR=0.51,95%信頼区間:0.27~0.95,P=0.015)統計学的に有意に改善した。また、2年無増悪生存率(PFS)はR-MPV-A+LD-WBRT群78%に対してR-MPV-A群54%を示した。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はR-MPV-A+LD-WBRT群81%に対してR-MPV-A群83%を示した。なお、全生存期間(OS)に関しては両群ともに未到達であった。
一方の安全性として、両群間で最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は貧血、リンパ球減少症、好中球減少、血小板減少症、ALT上昇、AST上昇であった。なお、R-MPV-A+LD-WBRT群で1人の患者で死亡が確認されているが、その原因は治療関連有害事象(TRAE)によるものかどうかは不明である。また、中等度/重度の神経毒性発現率はR-MPV-A+LD-WBRT群14%に対してR-MPV-A群11.4%であった(P=0.75)。
以上のNRG Oncology/RTOG 1114試験の結果よりAntonio Marcilio Padula Omuro氏らは「初発中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)患者に対するリツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン+シタラビン+低線量全脳照射療法は、化学療法単独に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善し、神経毒性率を上昇させることもありませんでした」と結論を述べている。