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BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの治療薬としてリムパーザがEUで承認取得

7月8日、英アストラゼネカ社と米メルク社は初回の化学療法で16週間以上の白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法で病勢進行が認められなかったBRCA遺伝子変異陽性(mBRCA)転移性膵がんに対して維持療法としてのリムパーザ(一般名オラパリブ、以下リムパーザ)がEUで適応承認を取得したと発表した。

BRCA遺伝子は生殖細胞系列の遺伝子であり、BRCA(乳がん感受性遺伝子)1/2が存在する。これらは損傷したDNAの修復を修復するためのタンパクを生成する遺伝子であり、細胞の安定性を維持する役割がある。この遺伝子に変異があるとBRCAタンパクが生成されない、正常に機能しないため、DNAが損傷されても適切に修復されず細胞が不安定になり、がんかにつながる遺伝子異常を引き起こす可能性が高くなる。

今回の承認は、第3相POLO試験の結果に基づく。この試験において、リムパーザは、gBRCAm転移性膵がん患者さんの病勢進行または全生存期間を7.4ヶ月とプラセボ群3.8ヶ月に対し、統計学的有意に延長した。また、安全性プロファイルにおいてはこれまでの一貫していた。

アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者のDave Fredricksonは「転移性膵がんは、急速に進行する性質があるため、患者さんは長きにわたり予後不良を余儀なくされてきました。またその治療も過去数十年にわたってほとんど進歩がない状況でした。今回のPOLO試験において、リムパーザは、gBRCAm転移性膵がん患者さんに対する初回治療後の維持療法として、プラセボとの比較で無増悪生存期間中央値をほぼ2倍に延長しました。今回の承認は、診断時において全ての患者さんにgBRCA検査を実施することの重要性を強く訴求するもので、欧州の患者さんに個別化治療の選択肢に関する情報を提供する一助となり得ます」と述べている。

今回の承認でリムパーザはgBRCAm膵がんに対する唯一のPARP阻害剤となった。同試験の結果に基づき、gBRCAm転移性膵がん患者の初回治療後の維持療法として米国などで承認されており、他の国においても薬事承認審査が進行中である。日本においては未承認。

膵がんについて
全世界で11番目に多く、がんによる死因の第7位の疾患。初期段階では症状がない、もしくは症状があっても特徴的でないことが多く、診断時には既に根治不能なことが多い、アンメットニーズの高いがん種。膵がん患者の約80%は診断時にがんが他の部位へ転移しており生存期間は1年未満である。また、過去数十年に渡り診断や治療に進歩がほとんどなかった。

リムパーザについて
ファーストインクラスのPARP阻害剤。BRCA1/2遺伝子変異などの相同組換え修復の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬。リムパーザはDNA一本鎖切断に結合するPARPをとらえ、複製を抑制することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させる。

POLO試験について
白金製剤ベースの一次化学療法で病勢進行が認められなかったBRCA遺伝子変異陽性膵がん患者(N=154人)を維持療法としてのリムパーザ300mgを1日2回投与群とプラセボ群に3:2に割り付け比較した第3相の無作為化二重盲検プラセボ対象他施設共同試験である。主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)、客観的奏効率ORR)などである。

参照元:
アストラゼネカ株式会社 プレスリリース

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