・ファーストライン治療後の切除不能局所進行性転移性尿路上皮がん患者が対象の第3相試験
・維持療法としてのBSC±抗PD-L1抗体薬バベンチオの有効性・安全性を比較検証
・BSC+バベンチオ群で死亡のリスクが31%統計学的有意に減少
2020年9月24日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてファーストライン治療後の切除不能局所進行性転移性尿路上皮がん患者に対する維持療法としてのベスト・サポーティブ・ケア(BSC)±抗PD-L1抗体薬であるアベルマブ(商品名バベンチオ;バベンチオ)の有効性、安全性を比較検証した第3相のJAVELIN Bladder 100試験(NCT02603432)の結果がCancer Research UK Barts CentreのThomas Powles氏らにより公表された。
JAVELIN Bladder 100試験とは、ファーストライン治療後の切除不能局所進行性転移性尿路上皮がん患者に対してベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオを投与する群、またはベスト・サポーティブ・ケア(BSC)を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、安全性などを比較検証した多施設共同無作為化の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法は、切除不能局所進行性転移性尿路上皮がん患者に対するファーストライン治療の標準治療である。しかしながら、本治療の全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)の改善効果は限れている。以上の背景より、ファーストライン治療後の切除不能局所進行性転移性尿路上皮がん患者に対する維持療法としての抗PD-L1抗体薬バベンチオの有用性が本試験にて検証された。
本試験の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群の21.4ヶ月に対して、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)群は14.3ヶ月であり、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群で死亡(OS)のリスクが31%(HR:0.69,95%信頼区間:0.56-0.86,P=0.001)統計学的有意に減少した。
全患者群における1年全生存率(OS)は、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群の71.3%に対して、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)群は58.4%だった。また、PD-L1発現率陽性群における1年全生存率(OS)は、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群79.1%に対し、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)群60.4%と、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群で死亡(OS)のリスクを44%(HR:0.56,95%信頼区間:0.40-0.79,P<0.001)統計学的有意に減少した。
副次評価項目である全患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群3.7ヶ月に対してベスト・サポーティブ・ケア(BSC)群2.0ヶ月、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを38%(HR:0.62,95%信頼区間:0.52-0.75)減少した。また、PD-L1発現率陽性群における無増悪生存期間(PFS)中央値はベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群5.7ヶ月に対してベスト・サポーティブ・ケア(BSC)群2.1ヶ月、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを44%(HR:0.56,95%信頼区間:0.43-0.73)減少した。
一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群98.0%に対してベスト・サポーティブ・ケア(BSC)群77.7%、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+バベンチオ群47.4%に対してベスト・サポーティブ・ケア(BSC)群25.2%を示した。
以上のJAVELIN Bladder 100試験の結果よりThomas Powles氏らは以下のように結論を述べている。”ファーストライン治療後の切除不能局所進行性転移性尿路上皮がん患者に対する維持療法としてのベスト・サポーティブ・ケア(BSC)+抗PD-L1抗体薬バベンチオは、全生存期間(OS)を統計学的有意に改善しました。”